編集部|マンガ

「リンパ浮腫のことはどうしても描きたかった」33歳で子宮頸がんになり子宮と卵巣を全摘出した漫画家が、“その後”を描いた理由

アラサーを迎えて、身体の不調をより気にするようになった。20代前半の頃は「若いから」できていたことも、だんだんと難しくなってきた(徹夜とか……)。
「まだ私は大丈夫」とか、なんとなく不調を感じてもそのまま放置していたら、取り返しのつかないことになってしまう危険性だってあるのだ――。

『さよならしきゅう』は、漫画家・岡田有希さんが子宮頸がんを宣告され、がんとの闘いを描いた闘病コミックエッセイ。宣告されてから手術するまで、そして術後の様子が、岡田さんや家族の心情とともに描かれている。そして『さよならしきゅう そのあと』は、術後5年経った日常を描いた作品。今回はそんな2作品を描かれた岡田さんに、改めて当時のこと、そして“その後”を描こうと思った理由など、たっぷりとお話を伺った。インタビュー前編では、『そのあと』を描くまでの背景やどうしても描きたかったことなどについて。
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生理もなくなってラクだと思ったけれど…

――33歳で子宮頸がんになり、子宮と卵巣を全摘出した経緯を描いた『さよならしきゅう』。そして『さよならしきゅう そのあと』は、術後5年経った日常を描いた作品です。「そのあと」を描こうと決めたのは?

岡田有希さん(以下、岡田) シンプルに、『さよならしきゅう』では描ききれなかったことがたくさんあったんですよね。連載の途中で1冊単巻となることが決まったので、放射線治療についても最終話でさらっと触れるだけになってしまって。読者レビューで、「ここがもっと知りたかったのに」とか「なんでこの部分は描いていないんだろう?」という意見がすごく多かったのを見て、「だよねー!」って私も思った……っていうのが、きっかけといえばきっかけですかね。でも、最初は描き残しをどこかでまた、とは思ってなかったんですよ。

――なぜですか?

岡田 『さよならしきゅう』が、自分が思った以上に褒めてもらえたので(笑)。これまで描いた作品のなかでいちばん読んでもらえたし、ポジティブな感想も多かった。自分的には、描き残したことがあるとはいえ、1冊で完成したものだし、それでいいんじゃないのかな、って。それと、しばらくは不定期に発熱するし、体調を回復するのに必死で、なおかつ子どもの世話と目の前の仕事をこなすのに精いっぱいだった、というのも大きいです。でも、術後何年かしてようやく「あれ? 私、生理がなくなってラクだな」とか「ホルモンに振り回されることもなくなったのに、どうしてこんなにイライラするんだろう」とか考える余裕ができて。
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――『そのあと』の冒頭に描かれていることですね。「イライラするのは/太るのは生理前だから」というのが通用しなくなって、不調の原因がわからなくなった……と。

岡田 そうなんですよ。ほんと、無意識にいろんなことを生理のせいにして自分を納得させてたんですよね。でもよく考えたら、おっさんだってイライラしてるし、太ってる。「あっ、私、おっさんと同じなんだ!」と気づいた瞬間、「これは作品になる」と思いました(笑)。
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岡田 『さよならしきゅう』で心残りだったひとつが、シリアスにしすぎたことだったんですよね。島袋全優さんが『腸よ鼻よ』っていう闘病ギャグマンガを描いていらっしゃいますけど、本当は私も、ああいうアッパーな雰囲気で描きたかったんです。でも、結果として、内面の葛藤を丁寧に追うしっとりした作品になった。今度は、「おっさんと同じじゃん!」とか「子宮なくなったら生理もなくなってラクだわ!」みたいなギャグ路線を入り口に表現すれば、また違った面白さが出るんじゃないか、と思ったことで、続編を描く気持ちになれたんです。
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