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16.Nov.2018

強すぎるがゆえに恐ろしくて悲しい、理屈を超えた母親の愛情。『人魚の眠る家』

強すぎるがゆえに恐ろしくて悲しい、理屈を超えた母親の愛情。『人魚の眠る家』

私の知人のお母さんで「子供の身に何かが起こるとわかる」と言う人がいます。彼女によれば、何かが起こると自分の体調が悪くなり、それとわかるのだとか。よくドラマとか映画なんかで、子供が幼いころ使っていたオモチャとか食器とかがガチャーンと壊れたりして、お母さんが「まさかあの子の身に何かよくないことが」みたいな場面がありますが、まさにああいう感じです。
子供を産んだことのない私にすれば「そんなのドラマの中だけじゃないの~?」と思ったりもするのですが、それでも彼女が実際に何度かそんな経験していることに嘘はなく、一概に科学的根拠はないからといって切り捨てきれないものがあります。現実主義者の私がそう思ってしまう理由は、母親には何かしら動物的な、本能的なものを感じるから。妊娠と出産は「命を作る」と言う意味において、現代を生きる人間に残された数少ない神秘的な経験だと思うし、それを経験しているお母さんの中には理屈では計り知れない何かがあるような気がするのです。
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『人魚の眠る家』はそんなお母さんを描いた物語です。
主人公は二人の子供を持つ母親の薫子。彼女が最初に生んだ娘がある事故によって脳死状態に陥ってしまうのですが、薫子は「もう再び目覚めることはない」という医師の言葉を信じず、娘を家に連れ帰ります。そして一縷の望みを託したのが、脳に直接電気信号を与える最新技術。小さな希望は小さな成功で膨れ上がってゆき、彼女はその技術にのめり込んでゆきます。
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何に圧倒されるって、篠原涼子演じる母親の愛情の強さです。いわゆる「死」とは違うけれど「生」とも言いきれない「脳死」という状況の中で、「それでも娘は生きている」と強く強く信じる彼女は、それを周囲に証明しようとするうちに、ある種の狂気の領域へと踏み込んでゆきます。理屈では説明できない母親の愛情、その強すぎるがゆえの恐ろしさと悲しさには、もはや打ちひしがれるしかありません。母親になりたい、母親を知りたい、そんな人に必見の作品です。
『人魚の眠る家』
(C)2018「人魚の眠る家」製作委員会
文/渥美志保
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