もっと深掘り! 2代目山の神・柏原竜二による2022年箱根駅伝【勝負の行方と見どころはココ!】
どこが勝つのか予想できない、と言われる2022年の第98回箱根駅伝。with編集部では柏原さんに「箱根駅伝のテレビ観戦がもっと面白くなる!」深掘り情報をさらに伺いました。
前回の記事はこちら! トリンドル玲奈が2代目山の神・柏原竜二さんに箱根駅伝の見るべきPOINTを教えてもらいました。「選手は何を考えて走ってるの?」「見逃しちゃいけない注目区間は?」……箱根駅伝観戦の予習として必見!
お話を伺ったのは……
柏原竜二/かしわばらりゅうじ
東洋大学時代、箱根駅伝5区で4年連続区間賞(85~88回)を獲得し、3回の総合優勝に貢献。選手引退後は、富士通の企業スポーツ推進室にてプロモーション業務を行う傍ら、自らの競技経験を活かして陸上競技の解説や講演、ゲストランナーなど多方面で活躍中。
柏原竜二/かしわばらりゅうじ
東洋大学時代、箱根駅伝5区で4年連続区間賞(85~88回)を獲得し、3回の総合優勝に貢献。選手引退後は、富士通の企業スポーツ推進室にてプロモーション業務を行う傍ら、自らの競技経験を活かして陸上競技の解説や講演、ゲストランナーなど多方面で活躍中。
Q この監督の「こういうところがすごい!」を教えてください。
A それはもう、駒澤大学の大八木監督ですね。自分がずっとやってきた指導方法を崩して変えられた、というところ。私たちの時代は、勝っても笑顔を見せず強面だったのが、今は勝つと笑顔で選手たちと一緒に喜んでいて、その姿を見ると何だか不思議な感じがします。
今の選手たちに聞くと、レース中に大八木監督に「男だろ!」と言われたいらしいんですが、OBたちに言わせると信じられないそうです。昔は「男だろ」と言われるのは怒られているのと同じだったのが、今は選手を励ます言葉になっている。それは大八木監督が変わったからこそですね。
中村匠吾選手(駒澤大学OB・現富士通)の東京オリンピック出場に向けての指導をしたことで変わったと言われていますが、中村選手は大八木監督とディスカッションすることが増えたと言っていました。そこで、大八木監督も選手の感情を読み解くことができたんじゃないでしょうか。大八木監督にとって中村選手は大きな存在だったのだと思います。
今の田澤廉選手(3年)と大八木監督の関係も同様だと思います。ちゃんとコミュニケーションを取れる選手が増えたからこそ、監督が変わり、チームの強化、前回大会の総合優勝につながったのではないでしょうか。

駅伝に強く、学生ランナーNo.1の呼び声も高い田澤廉選手。箱根駅伝での活躍も期待される。
Q 箱根駅伝を走った東洋大学出身のランナーの中から、服部勇馬選手と相澤晃選手というふたりの選手が、2021年の東京オリンピックに出場しています。恩師である酒井監督のすごさって、どこにあると思いますか?
A 酒井監督はこの10年ちょっとでオリンピック選手を何人も輩出しているんですよね。MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)への出場選手も、東洋大出身選手が最多でした。
ただ、監督に言われるがままに練習しているだけでは、どんな選手も伸びないです。酒井監督は「これをやってみよう」というマインドの切り替えが早いタイプ。そこで、なぜこの練習をしなきゃいけないのか、なぜこれを食べなきゃいけないのか、あるいは食べてはいけないのか、なぜ今これが必要なのか、それらをちゃんと説明してくれる。
大事なのは、それに対して「わかったふり」をしないで、ちゃんと考えて理解できる選手が伸びるということです。たとえば、2021年の全日本大学駅伝で、東洋大学の選手はレース前後の血糖値を測る小さなオセロみたいな機械を腕につけていたんですが、なんのためにそれをつける必要があるのか、ちゃんと理解できているかが大事です。
僕が在学中、酒井監督は寮のホワイトボードに1ヵ月の練習メニューを貼り出していたんですが、僕の場合は酒井監督をつかまえて「1ヵ月の流れはわかりました。僕の練習の流れもわかりました。でもこのメニューは疑問なんです」「練習メニューの組み立て、こっちの方がいいと思うんですが?」などと意見を伝えていました。そうすると酒井監督は「でもな、柏原……」と言って、その1ヵ月のメニューの意味を伝えたうえで、「じゃ、ちょっとここ変えようか」とフレキシブルに対応をしてくれる。理解したうえで伝えるのと、「やりたい・やりたくない」優先で伝えるのは違う。「キツいからイヤだ」では伸びないですよね。我々の世代はとくに我が強かったから、やりたいことの主張も強かった(笑)。酒井監督はそこを納得させるために辛抱強く説明してくれたな、と思います。
ただ、監督に言われるがままに練習しているだけでは、どんな選手も伸びないです。酒井監督は「これをやってみよう」というマインドの切り替えが早いタイプ。そこで、なぜこの練習をしなきゃいけないのか、なぜこれを食べなきゃいけないのか、あるいは食べてはいけないのか、なぜ今これが必要なのか、それらをちゃんと説明してくれる。
大事なのは、それに対して「わかったふり」をしないで、ちゃんと考えて理解できる選手が伸びるということです。たとえば、2021年の全日本大学駅伝で、東洋大学の選手はレース前後の血糖値を測る小さなオセロみたいな機械を腕につけていたんですが、なんのためにそれをつける必要があるのか、ちゃんと理解できているかが大事です。
僕が在学中、酒井監督は寮のホワイトボードに1ヵ月の練習メニューを貼り出していたんですが、僕の場合は酒井監督をつかまえて「1ヵ月の流れはわかりました。僕の練習の流れもわかりました。でもこのメニューは疑問なんです」「練習メニューの組み立て、こっちの方がいいと思うんですが?」などと意見を伝えていました。そうすると酒井監督は「でもな、柏原……」と言って、その1ヵ月のメニューの意味を伝えたうえで、「じゃ、ちょっとここ変えようか」とフレキシブルに対応をしてくれる。理解したうえで伝えるのと、「やりたい・やりたくない」優先で伝えるのは違う。「キツいからイヤだ」では伸びないですよね。我々の世代はとくに我が強かったから、やりたいことの主張も強かった(笑)。酒井監督はそこを納得させるために辛抱強く説明してくれたな、と思います。