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推しがいなくたって決して不幸ではない。「推しがいる自分」がアイデンティティになってしまったときの“危うさ”とは【ひらりささんインタビューvol.2】

「推し」「沼」――。ここ最近、そんな言葉がよく聞かれるようになり、雑誌やテレビなどでも取り上げられるようになった。推しがいてくれることでしんどい仕事もがんばれる! 推しに救われている! という人もたくさんいるだろう。でも、ちょっとはずれてしまうと、普通に生きていたはずなのにいつのまにか沼に“溺れていた”なんてこともあるのだ。『沼で溺れてみたけれど』(講談社)は、そんな沼に溺れてしまった15人の女性に話を聞いたエッセイ集。文筆家で、女性4人によるユニット「劇団雌猫」メンバーでもあるひらりささんが、彼女たちの“お金”と“欲望”に迫っている。

本書に登場する女性の沼は人それぞれであり、かつどれもインパクトが大きい。不倫相手のために5700万円のタワマンを買った女性や、手取り180万円だけど推しに救われていた女性、スピリチュアルにハマって1000万円使った女性……。「自分はそんなことにならない」とどこか他人事のように思ってしまうかもしれないが、しかし登場する彼女たちも“普通に生きていた”のである。もしかしたら、自分だって“沼に溺れる”かもしれないのだ――。

今回、著者であるひらりささんにインタビューを実施。全3回にわたりお届けする。第2回目では、ひらりささんが印象的だったエピソード、そして、推しに“全て”を委ねてしまうことの危うさについて。

印象的だった「手取り180万円だけど推しに救われていた38歳女性」

――ひらりささんの中で特に印象深いエピソードはありますか?

ひらりささん(以下、ひらりさ) 私にとって大事なものになったし、まわりからの反響も大きかったのがCase10でお話を聞いたシズカさんです。九州に住んでいて、手取り180万円のなか300万円を貯めて、38歳で上京した方なんですが、推しが引退したことで情熱を失ってしまったという点でも、地方に生きる女性の苦境という点でも、すごく考えさせられるものがありましたね。Case05までの第1章は、恋愛系のネタでかためていたこともあり、「最初は週刊誌のような気持ちで読んでいたけど、Case10を読んで泣いちゃった」という読者のコメントも見かけました。

――ひらりささんとは、10年ほど前からお知り合いだったんですよね。

ひらりさ そうです。でも、ほとんどネット上の交流で、実際にお会いしたのは1度か2度くらい。だからお話をうかがうのは特に緊張したんですが、お願いしてよかったなと思っています。ただ、連載時はOKをいただいていたんですが、書籍化に際しては、心の傷が深い時期の話を印刷物として残すのは抵抗がある、と一度お断りをいただいて。その気持ちはすごくよくわかったので、最初は諦めるつもりだったんですけど、何度かやりとりをするうちに掲載のご許可をいただきました。今回、掲載した皆さんの現在を改めてうかがって書き加えているんですが、やはり連載中とは心境や環境が変わった人も多かったです。

――状況が変われば、気持ちも変わりますもんね。

ひらりさ そのときは笑って話せることだったとしても、あとから「やっぱりやめておけばよかった」と後悔するかもしれない。自分の人生について語るって、そういうことだと思うので、活字にする以上はその責任があるな、って。だから、現在進行形で状況が揺れ動いているお話は保留とさせてもらいました。
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