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「なりたかった自分になれなくても、頑張りは無駄にならない」葛藤しながらも自分のやりたいことを追い求め続けた小説家が、悩めるアラサー世代に伝えたいこと

『忍者だけど、OLやってます』――タイトルを聞いただけで「忍者が会社にいるってこと……?」とワクワクしてしまう小説シリーズの新作「遺言書争奪戦の巻」が発売。主人公は、忍者の世界に馴染めずに里を抜けだし、エネルギー関連の会社で忙しく働いている28歳の陽菜子。自身の生き方に悩みながら成長していく彼女の姿を丁寧に描いてきた、著者の橘ももさんにインタビュー。15歳で作家デビューし、会社勤めも経験した自身のキャリアについても語っていただきました!
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【これまでのインタビューはこちら】

プライベートを投げうって頑張っても実を結ばないかもしれない、と怖かった

――橘さんご自身のキャリアについても教えていただけますか? 高校1年生・15歳で小説家デビューされて、そこから大学に進み、その後「ダ・ヴィンチ」編集部に入られたのでしょうか。

はい。デビューは「ティーンズハート」という少女小説のレーベルだったのですが、大学時代にレーベル自体がなくなり、書く場所がなくなってしまった。その前に大学受験で書くのをお休みしている間に読者が離れたりもしたんですよね。就活もしたんですが小説を書く以外にやりたいこともなくて……でも出版社に入って編集者になることには抵抗があったんですよ。「そっち側」に回ったら、二度と小説が書けないんじゃないかと思った。かといってほかに興味を持てるものもなくて、出版社や映画制作会社などをいくつか受けては落ちていました。

そうしたら、知り合いが「ダ・ヴィンチ」が働き手を探している、と紹介してくれたんです。経歴をお伝えしたうえで面接をしてもらえることになり、大学卒業してすぐ、業務委託の形で働きはじめました。
――好きだった雑誌とはいえ、「そっち側」の仕事に就いたことへの葛藤はなかったのでしょうか。

葛藤はずっとありました。雑誌を作るだけではなくて作家さんに小説を書いてもらう仕事の担当者として採用されたので……。でも、「本当はこんなことやりたくない」なんて思って仕事するのは作家さんにも失礼だし、「私も書いてたんですよ」なんて言う編集者に担当されるの、いやじゃないですか。だから意識的に「書く自分」を封印していたところもあります。

そもそも忙しすぎて、土日も仕事が入るし、休みがとれたら寝るだけになって、小説を書くどころじゃなかったんですよね。そうするうちにだんだん、世の中にはこんなにもおもしろい小説があふれているのに私が書く意味ってなんなんだろう? と考えるようになって……。

これまでずっと、作家として成功できるならプライベートの幸せなんていらない、私に降り注ぐ全部の運を仕事にください、と思って頑張ってきたけど、どんなに頑張っても報われるとは限らない。私にはそもそも才能なんてないかもしれない。それなのに年だけはどんどん重ねて、結婚して子供を産むことだってできなくなるかもしれないのに、それでも頑張り続ける意味がどこにあるんだろう? と思っていました。

――同じように悩む人はとても多いのではないでしょうか。

妊娠出産には、どうしても年齢が関係してきますからね……。私は「いつまで頑張ればいいんだろう」と思いながらも「諦める」ということがどうしてもできなかった。それはたぶん「書きたい」という気持ちが捨てられなかったからなんですよね。

入社して3年……25歳くらいのとき、ずっとあたためていた小説をどうにか書き上げ新人賞に応募したところ、最終選考の一歩手前まで残った。まだ書けるかもしれない、と思ったのと同時に、「報われるかどうかは関係ない。私が書きたいんだからしかたない。その気持ちがなくなるまでは、あがくしかない」と、肚をくくりました。その後、30歳くらいまではずっとゆらゆらしてましたけどね。陽菜子みたいに(笑)。
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