現役引退を表明した大久保嘉人選手。現役最後の今年、子連れ単身赴任でサッカーと育児の両立に挑戦していた
私生活では4人兄弟の父親としての顔も持っている大久保選手は今季、東京のチームからセレッソ大阪への移籍に際して、三男を連れてワンオペで家事も育児もこなす子連れ単身赴任に挑戦中。
初めての家事・育児に戸惑い、奮闘するプロサッカー選手の、笑いありドタバタありの息子との二人暮らしを描いた書籍、『俺は主夫。職業、現役Jリーガー』が、11月26日に発売!
はじめに
家事はせんけど、時間のあるときには子どもたちと遊ぶ。
子どもたちと遊ぶのは好きやし、楽しい。どちらかというと子煩悩なほうだと思ってる。
けど、「育児をしているか」と問われたら、うーん、むずかしいな。
仕事でサッカーして、家は嫁が守ってくれて、好きなときに子どもたちと遊んで、ときには大きくなった長男を誘って一緒に飯食いに行って……。
俺はそんな生活スタイルが気に入っていた。
ずっとそういう生活が続くんかなと思っていた。
引退まで考えたシーズンの終わり、突然決まった古巣復帰と単身赴任
ケガでの離脱もあったし、点を取れてないシーズンなんて初めてやったから。
けど、そんなシーズンの終わり頃、セレッソ大阪からオファーが届いた。
セレッソは、俺がプロとして一番最初に所属したチーム。22歳で最初にセレッソを離れたときから、「最後はセレッソでやりたい」って気持ちがずっとあった。それはただ自分が勝手に思ってただけなんやけど、どこのチームに移籍するときもずっと抱えてた思い。
そんな、特別に思い入れのあるチームからのオファー。
「やろう」
即決した。
三男橙利のまさかの宣言! 最初はだれも、本気にしなかった
1月の上旬に移籍の発表があって、1月22日からチームが始動するから、前日の21日に大阪に行くことになった。
「パパは大阪で一人で暮らすからね」
それを伝えたときやった。橙利がいきなりこう言い出したのは。
「俺も行く」
家族のみんなが耳を疑った。
「は? おまえ何言ってんの」
けど、誰も本気にせんかった。理由を聞いたらね、なんて言ったかな。「パパと行きたいから」やったかな。
俺は「いいよ」って答えた。こんときは俺もなんも考えとらんかった。
「いざ行くってなったときには〝やっぱり行かない〟って言うやろな」って思ってたから。っていうか、それを期待してた。俺は。
緑二に「おまえも来たい?」って聞いたら、「いや、俺はいい」って。

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