人は、どうしてこんなに欲張りなのだろう。
私は「今後の人生、毎日エスニックしか食べられない」と言われたらきっとすごく絶望するし、一つしか選べないなら和食を選ぶなんてことは、いつなんどき、どんな気分のときに聞かれても揺るがない。しかし、どうしてもエスニックでないと満足できない日というのも、あるものなのだ。デートする男性のタイプにおいても、同じことが言えるような気がする。
寡黙で温厚な時計職人との食事
普段接することのないタイプの男性と出会い……
しかし、その日私は趣向を変えて、寡黙で温厚な感じの職人と会っていた。職人の職業は時計職人で、スーツを着ることはなく、人と喋ることも少なく、一人で黙々と作業をすることが多いとのことだった。職人はとにかく寡黙で、優しげで、やわらかい空気を放っており、いかにも性格が良さそうだった。