とある新人ホストのお話
3ヵ月で激変してしまった理由
10年以上前、僕がまだホストクラブを経営していた頃の話です。当時仲良くしていた他店のホストクラブのオーナーさんから、ある日電話がかかってきました。
「ちょっと聞いてくれよ! めっちゃ男前の新人入ってん! 今から見にこーへん?」
なるほど、期待の大型新人が入店したから自慢したいんだなと思い、「じゃあ今から行きます」と言って電話を切りました。
そして彼がいる店に行き、男前の新人くんに会わせてもらったんですね。たしかにめちゃめちゃカッコいい。そりゃ自慢したくなるのもわかる。
「ええやろ? ええやろ?」とニヤニヤしながらオーナーさんが言ってくるので、「やりましたね! ええなー。うちにも男前の新人が入ってこーへんかなー」なんて言いながら、店を後にしました。
そしたら席についてくれた男の子が、「お久しぶりですね!」と声をかけてくれるのですが、一瞬誰かわからなかったんですよ。
「あ、あのときの男前の新人くんや!」しばらくしてから彼のことを思い出し、雑談していたのですが、僕は妙な違和感を覚えていました。
その違和感は何かというと、雰囲気が変わりすぎているんですよ。しかも悪いほうに。
最初出会ったときは、まだ水商売のことを何も知らない初々しさや素直さが面影として残っていたのですが、今の彼にはそれがまったくないんです。完全に悪い顔つきになっていて、獲物を追うかのようなギラギラした鋭い目つきになっているんですよ。
こういうことはホスト業界ではさほど珍しいことではありませんが、たった3ヵ月でここまで顔つきが変わった新人を僕は見たことがないので、今でもたまに思い出します。