教育ジャーナリストのおおたとしまささんは自身の著書『なぜ中学受験するのか?』(光文社新書)で、とにかく偏差値の高い中学に行かせなきゃ! なにがなんでも中学受験しなきゃ! 公立はさけなきゃ!と、受験ありきの過熱した空気にメスを入れる。中学受験とはなにか、受験を「毒」にせず「良薬」にするためにはなにが必要なのかを、本書より抜粋し、紹介する。
おおたさんは講談社FRaU主催「考えよう!『ミライの地球』FRaU SDGs eduこどもプレゼン・コンテスト」の審査員もつとめるという。そのコンテストの詳細は記事末に掲載されているのでそちらもぜひチェックしてほしい。
憧れの学校に合格できないことは「失敗」ではない
中学受験で得られるものを最終的な合否だけで見れば、そもそも中学受験生の7割以上は「失敗」だ。中学受験で首尾良く第一志望校に合格できるのは3割にも満たないといわれているからだ。
しかし中学受験で得られるものをもっと大きな視野でとらえれば、入学を切望した学校に合格できないことは必ずしも中学受験の「失敗」を意味しない。そこで中学受験を、親子での大冒険だととらえてみたらどうだろうというのが拙著『なぜ中学受験するのか?』の提案だ。
アメリカの神話学者ジョゼフ・キャンベルは名著『千の顔をもつ英雄』で東西の多様な神話を列挙し、英雄の出現に、分離→通過儀礼→帰還のパターンが踏襲されていることを明らかにした。それが人間を覚醒させる普遍の法則であることが示唆される。
現代社会における同様の構造を、私は中学受験に見出すのだ。小学校に通っているだけでは知り得なかった世界があることを知り、数々の試練を経験し乗り越え、その過程で得たものを世の中に還元する。

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