しかし、卵子を凍結をしたとしても、将来、誰もが必ず妊娠できるとは限りません。卵子凍結は自分のライフプランを実現させるためや、日々年齢を重ねていくことに必要以上に焦らなくて済むために有効な選択肢のひとつではありますが、あくまでも“保険”でしかなく、確実な対策ではないのです。
そこで、卵子凍結から妊娠に至るまでの確率やプロセス、ランニングコストなどを、不妊症看護認定看護師の西岡さんに伺って、正しく知っていきましょう。
卵子凍結が注目されている理由は
卵子凍結は、最近かなり身近になってきていますね。
そのひとつの要因が、卵子凍結を実施している医療機関が増えてきたことだと思います。今年の4月から不妊治療が保険適用化されることで、婦人科の存在自体も身近になってきていますね。(不妊治療の保険適用化に関する記事はこちら)
また、外資系企業を中心に、卵子凍結を福利厚生に取り入れる企業も増えてきています。自治体でも補助を設けようとする動きもあって、昨年末には、2015〜17年度に千葉県浦安市が卵子凍結に公費を助成した事業を受けた女性が、当時の卵子で出産したというニュースもありました。その事業は全国初の試みで、少子化対策の一環として行われました。当時は10万~100万円以上かかっていた卵子採卵と凍結に対し、市が採卵・凍結にかかる費用と3年間の保管料を全額補助していました。
そういった社会の流れに背中を押されるように、若い女性の間では年齢と出生率に密接な関係があることが常識となってきました。その結果、卵子凍結という情報まで辿り着く人も増えています。卵子は年齢を重ねると共に老化してしまい、質が低下した卵子では妊娠率が下がるということが広く知られるようになりました。
しかし、出産を希望する女性の全てが、必ずしも若いうちに出産できるとは限りませんよね。パートナーがいなければ妊娠して出産する機会にはなかなか恵まれませんし、社会に出たばかりの20代、仕事の責任が大きくなってくる30代前半に、出産と育児のため長期間職場を離れることに躊躇してしまう人も多いでしょう。経済面での不安もネックになるかもしれません。
女性の年齢が35歳を越えると妊娠率の低下が加速するというのは事実です。凍結した卵子に限定したものではなく、体外受精全体の日本産科婦人科学会の統計になりますが、男女ともに年齢とともに妊娠率は低下していきます。特に35歳からは顕著となり、35歳で40.0%であった妊娠率が、40歳となると27.2%となります。そして、これはあくまで「妊娠率」であって、その妊娠が順調に進み、実際に出産に至る確率で言うと、もっと低くなります。
しかし、卵子凍結をすることによってその卵子自体の年齢による変化は止めることができて、年齢を重ねた時でも妊娠する確率を、僅かではありますが高めることができるのです。

西岡有可
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