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編集部|ピープル

イギリス在住『ぼくイエ』作者が、日本社会に感じること「変わるべきことも、驚くほどに何も変わらない」

人種差別や貧富の差が広がる、イギリスの“底辺”中学校に通う息子の日常を綴った、累計100万部を突破した『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社/以下、『ぼくイエ』)。著者のブレイディみかこさんは、1996年からイギリスに渡り、一貫して“格差社会の現実”を描き続けている。そんなブレイディさんの最新作『両手にトカレフ』(ポプラ社)は、初となる長編小説。『ぼくイエ』では描けなかった、“現実を超えるリアル”に挑んだというブレイディさん。本作の刊行を記念して、全4回にわたってインタビュー。本作にこめたもの、そして日本人が変えるべき意識とは――。

▼前回はこちら▼

フィクションのほうがむしろリアルに近い場合もある

――『両手にトカレフ』でミアはずっと絶望していますよね。ちょっと上向きになるかもしれない、と思った瞬間、現実でひどいことが起きて、さらに深く暗い場所へと沈んでいくという繰り返し。どこまで彼女が苦しまなきゃいけないんだ……と祈るような気持ちで読んでいましたが、これは現実で起きていることでもあるんですよね。

そうですね。どのあたりとは言いませんが、私自身の経験や10代のころに考えていたことも随所に反映されています。よく、「自伝を書きませんか?」とお声がけいただいて、そのたびに断っているんですけれど、一番自伝に近いものがこの小説だったような気がします。でも、なぜノンフィクションではなくフィクションとして描いたかというと……ノンフィクションのほうがリアルから遠ざかるというか、ほっこりしたいい話になってしまいがちなんですよね。
 
――『ぼくイエ』のときのように“見えない存在”を生み出してしまいかねない、ということでしょうか。

それもありますし、たとえば私の経験を書くとしたら、家族や親族、私に関わるさまざまな人たちのことも書かなきゃいけないじゃないですか。そうすると、日本に住んでいる彼らに迷惑がかからないように、傷つかないように、多少は表現を調整することもある。書けないエピソードも、もちろん、出てきます。そうしてなんとなく、みんないい人になってしまった話を“現実”として打ち出すのは、息子が言っていたように、やっぱりリアルじゃないですよね。でもフィクションなら、私はミアに、自分やさまざまな人たちの現実を重ねて、現実にはおおっぴらに言えないようなことも、書くことができる。フィクションのほうがむしろリアルに近い場合もあるのだ、というのは今作を通じて得た発見でした。
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