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社会全体を変えることに繋がる“エンパシー”
シティズンシップ教育(他者を尊重しながら、市民として社会的な役割を果たせるようになることをめざす教育)については、『ぼくイエ』でもずいぶん書きましたが、広い視点で物事を見られるようにならなければ、という意識がイギリスではとても強いんです。それは、日本と違ってさまざまなルーツを持つ人たちが一つの教室、一つの社会に集まっている、ということも、もちろん影響しています。
たとえばウクライナ問題を学校で話しあうことになったとき、その教室にはロシアから来た子もいれば、ウクライナやベラルーシから来た子もいるかもしれない。一方的な視点で物事を語ることは、どうしたってできないんです。私も、親しいイラン人の友人が「イギリスがシリアに爆弾を落としていたときは、こんなに報道していなかったのに」と言うのを日常的に聞く機会があります。そんなふうに、子供の頃から生まれ育った背景によってさまざまな視点があることを知り、異なる価値観をもつ相手と話しあうことは、個人の視野を広げるだけでなく、自分とは無関係に見える他者にも手をさしのべ、社会全体を変えていくことにも繋がっていくのだと思います。

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