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編集部|ピープル

なぜ、日本で「親ガチャ」という言葉が広まったのか。ブレイディみかこが語る、日本とイギリスの違い

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“家族意識”の強い日本では、原因を親にばかり求めてしまう

――たしかに。

ここ数年で、幼い子供が虐待死してしまった事件がいくつか起きたと思うのですが、イギリスだったらもっと初動の時点でソーシャルワーカーが介入して保護されているはずなんです。それなのに、保護が遅れて行政の不手際で状況が悪化することもある、というのは、言ってみれば、国ガチャ・政府ガチャで起こる不幸であり、不運です。そこに生まれてしまったこと自体は自分で変えられない、という意味では国家や共同体も同じであるはずなのに、家族意識の強い日本では、なぜか原因を親にばかり求めてしまう。貧困にしても、10代の生きづらさの話にしても、毒親だったからしょうがない、苦しむしかないんだ、みたいに帰結させてしまう。もちろん子供を苦しめる親の責任もありますが、家庭の外にも、苦しんでいる子たちを助けたいと思っている大人はいるし、外側の人たちが手を差し伸べやすい仕組みも必要ではと思います。
 
――助けたいと思っても、家族の問題だから、と締めだされてしまうケースもありますしね……。

制度の問題でもありますが、意識の問題でもあると思います。子育てなんて、本当に、半分ちぎれているくらいのゆるいネットワークをたくさん持っていたほうが、安全なんですよ。ミアの母親だって、ゾーイやソーシャルワーカーのように、外部から手を差し伸べてくれる人がいたから、どうにか生き延びてこられたわけで。唯一無二の親友がたった一人いたところで、その人がもし病気になったら、やむをえず引っ越してしまったら、詰んでしまうような状況は避けたほうがいい。実の親よりも子育てが得意な人はまわりにいるかもしれないし、親だって、子育ては苦手でも別の分野でものすごく貢献できることがあるかもしれない。それをよしとする意識を社会全体で育てることも、必要なんじゃないかと思います。なんでもかんでも家族の中で処理しろ、親や子供が自分で抱えろ、できなければ家族もろとも滅ぶしかない、みたいな社会はやっぱり、苦しいと思います。

――改善するためには、どうしたらいいんでしょうか。

最近、よく言われることですが、真に自立した人というのは、依存先をたくさん持っていますよね。足場がたくさんあるから、その一つが壊れたり、失われたとしても、ぐらつくことはない。助けてくれる人が大勢いるということは、恵まれているように見えるかもしれないけれど、個人の努力でそうできなくても、行政や民間団体がそういうシステムを作るお手伝いをすることができる。私自身、そういうことをしている慈善団体の託児所で働いていましたから。そうすれば、たったひとつのものを大事にしがみつくのではなく、広い視野から可能性を見出すことができるようになる。もちろん、助けを求めるためには、相手に対する信頼が必要なので、そう簡単にはいきませんが、その信頼関係を築いていくためにも、やはり子育てを家庭内に閉ざさず、他者とのコミュニケーションの中で行うことが必要。「うるさい」とムカつくような人もいるけど、本当に困っているときに泣けるような支援をしてくれる人もいる。その体験の積み重ねが、やがて社会全体への信頼に繋がっていくのかなと思います。

《インタビュー最終回は7月4日更新》

【PROFILE】

ブレイディみかこ

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1965年、福岡県生まれ。1996年から英国ブライトン在住。2017年、『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』で新潮ドキュメント賞を受賞。2019年、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で毎日出版文化賞特別賞、Yahoo!ニュース | 本屋大賞 ノンフィクション本大賞などを受賞。ほか著書に『女たちのテロル』『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』など多数ある。

【Information】

『両手にトカレフ』(ポプラ社)

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「ここではない世界」は、 今この場所から始まっていく――。 寒い冬の朝、14歳のミアは、短くなった制服のスカートを穿き、図書館の前に立っていた。そこで出合ったのは、カネコフミコの自伝。フミコは「別の世界」を見ることができる稀有な人だったという。本を夢中で読み進めるうち、ミアは同級生の誰よりもフミコが近くに感じられた。一方、学校では自分の重い現実を誰にも話してはいけないと思っていた。けれど、同級生のウィルにラップのリリックを書いてほしいと頼まれたことで、彼女の「世界」は少しずつ変わり始める――。
撮影/Shu Tomioka 取材・文/立花もも 構成/岩崎 幸
 
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