編集部|ピープル

女同士は“敵”ではない――山内マリコが「女性同士の絆」を書き続ける理由【インタビューvol.3】

転職したり結婚したり、妊娠したり……周りがどんどん変わっていって、つい焦りがちなアラサー世代。他と比べる必要なんてないのに、なんだか取り残された気がしてしまう人も多いだろう。

そんな20代後半から30代にかけて、息苦しさを抱えている女性にぜひ見てほしい映画、『あのこは貴族』が2月26日(金)より公開された。今回映画公開を記念して、原作者・山内マリコさんへのインタビューが実現! 

一人の男性を巡る二人の女性を“敵対”ではなく“和解”という形で描いている、『あのこは貴族』。多くの作品で女の友情を描き続けている山内さんが、私たちに伝えたいメッセージとは……?

\これまでのインタビューはこちら/

女同士は“敵”ではなく“連帯”できる――「女性同士の絆」を書き続ける理由

――映画『あのこは貴族』を拝見しましたが、原作の世界観がものすごく丁寧に描かれている印象でした。山内さんは映画を見られて、いかがでしたか?

山内マリコさん(以下、山内) もう、本当に最高でした! ひいき目ではなく、純粋にとてもいい映画。岨手由貴子監督が小説のエッセンスをぎゅっと凝縮して、映画的な演出をされています。俳優さんもみなさんこれがベストアクトというくらい、いい仕事をされていました。万人に自信をもっておすすめできる映画ですが、Wヒロインである華子や美紀と同年代のアラサー女性にはぜひ見てもらいたいですね。

――山内さんが、この映画を通して一番伝わってほしいと思われていることは何でしょうか?

山内 この物語は、東京で箱入り娘として何不自由なく育てられてきたお嬢様の華子と、地方出身で実家も裕福ではない美紀が、一人の男性を挟んで出会います。いわゆる三角関係の構図ですが、よくあるドロドロした展開を回避させているんです。男性が無意識に女性を対立的な立場に置き、そのフィールドの中で女性までが「女の敵は女」などと言っているのがこれまでの世の中でした。女同士はいがみ合わなくていいんだ、人をやっかんだりせず、自分にとっての幸せを探せばいいんだと、前向きになってもらえたら、この作品のコアな部分はバッチリ届いた! と思いますね。

――『あのこは貴族』に限らず、山内さんの作品は女性同士の絆がテーマのものが多いですよね。一貫してそこを描き続けられている理由は?

山内 大学時代に出会った親友の存在が大きいですね。彼女との友情をとおして、今の自分になっていったという気がします。ちょうど人格形成の仕上げみたいな時期だったので、お互いを合わせ鏡にしながら、心を開き合い、たくさん話をしました。彼女との密な関係をとおして、自分の“形”が決まっていったというか。親友と出会わなかったら、なにを軸にして生きていけばいいか、わからないままだったかもしれません。

――親友ができたことで、考え方や価値観に劇的な変化が起こったということでしょうか?

山内 いちばん大きな変化は、内面化していたミソジニー(女性嫌悪)が浄化したことですね。知らずしらずのうちに90年代的な恋愛至上主義に染まっていたのですが、男の子といるより親友としゃべってる方が圧倒的に楽しくて(笑)。それまで優先順位の1位は、どうしても彼氏になりがちでした。それでいて、彼氏の前では、求められている女性を演じてしまうというか、私のこういう部分が好きみたいだから、そこしか見せないように気を使ってる部分があったんですね。けど、親友とは自分のままでいられる。むしろ、自分というものがどんなものかわからなかったのが、親友とおしゃべりすることを通して、「私ってこういう人間なのか」と、見えてきた感じがしました。そしたら、すごく生きやすくなったし、自分に自信が持てるようになった。少なくとも、いい友達がいるってだけで、大きな自信になりますし。友情って、すごく感動的なものなんだとはじめて知りました。そんなわけで、私を感動させたのは恋愛ではなく友情なんだから、小説にそれを描くべきだ! という思いが強いんです。
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