編集部|ピープル

「地元サイコー!」とはまだ心の底から思えなくて――地方出身女子が抱く“複雑な郷土愛” 【山内マリコインタビューvol.4】

転職したり結婚したり、妊娠したり……周りがどんどん変わっていって、つい焦りがちなアラサー世代。他と比べる必要なんてないのに、なんだか取り残された気がしてしまう人も多いだろう。そんな20代後半から30代にかけて、息苦しさを抱えている女性にぜひ見てほしい映画、『あのこは貴族』が2月26日(金)より公開された。今回映画公開を記念して、原作者・山内マリコさんへのインタビューが実現! 

これまで山内さんには、「女性にとっての婚活とは」「女同士の連帯」についてお話を伺ってきた。最終回となる今回は、山内さんが作品の中で多く登場させてきた“地方出身女子”について。富山県ご出身の山内さんが、地元に対する“切っても切れない思い”とは……?

\これまでのインタビューはこちら/

「地方」と「女性」――当たり前のことが実は掘り下げるべきテーマだった

――山内さんの作品といえば、女性同士の連帯と同時に、地方出身女子も数多く登場しますよね。そういった“地方”を描く理由は何なのでしょうか?

山内マリコさん(以下、山内) 書きたい題材が最初からあったわけではなく、小説を書きたいという表現欲求が先にありました。私は平凡な中流家庭で、優しい両親にぬくぬく育ててもらい、自分の夢を追いかけてました。20年前の日本はそれが普通ってくらい平和で、だからいざ小説を書こうと思っても、あまりに普通すぎて、自分には語るべき物語がなかったんです。例外的に、親友との関係は自己革命みたいなものだったので、これを書きたいと思えましたが、それだけじゃなにか足りない。さんざん自分と向き合った果てに、私にとっての“普通”こそ、私が書くべきなんじゃないかと気がついたんです。「女性であること」も一生もののテーマだし、「地方出身であること」だって、ものすごく普遍的なテーマじゃないかと。

――山内さんの作品をきっかけに、地方を舞台とした小説や映画などが多く作られるようになった印象すらあります。

山内 たしかに『ここは退屈迎えに来て』を書いているときは、先行する研究や資料があまりなかったですね。富山の出身ですが、中心部に近い街側で育ったので、身近に里山的な自然も田んぼもなく。土地固有の風土を感じることはあまりなくて、車で走る県道沿いの景色が、故郷の情景なんです。あんまり素敵じゃないけど、それが自分にとっての“普通”。それを書くべきだと思えたのは、東京に行ったことが大きいです。上京したことで、当たり前だと思っていた街を、外の視点から見つめられるようになりました。
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