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神崎恵「もう、メイク落としていいですか?」

神崎恵「わたしがわたしらしく生きるためになくてはならない“おば”パワー」【もう、メイクを落としてもいいですか? vol.30】

美容家・神崎恵さんによる連載「もう、メイクを落としてもいいですか?」。第29回目は「逃げる」という題でお届けします。

vol.30「憧れのおばさん」

大好きな伯母がいた。
幼いわたしを女手一つで育ててくれていた母のよきサポーターであった伯母は、ときに母親のような厳しさもあったし、それとは違う角度の眼差しでわたしを見守ってくれる存在でもあった。

わたしが成長するごとに、その位置は姉妹のような友人のような、そんな距離感に変化していったように思う。
思春期には、親には話せない学校や恋の話をきいてくれた。結婚に行き詰まり、でもそれを親に言えずにいたとき、そっと支えてくれたのも伯母だった。わたしの幸せを思いながらも、親とはまた違う角度の眼差しと包容力で守ってくれるひと。

時代と厳しい境遇を乗り越え、自由を手に入れた伯母は、吸い込んでも吸い込んでもまだまだたっぷりある酸素を手に入れた金魚みたいにいつも眩しく、鮮やかに輝いて見えた。やわらかな髪色にはっとする色の服やアクセや帽子を合わせ、シャネルやディオールやサンローランの鮮やかなピンクのリップやアイカラーを見るたびにあの鮮やかな表情を思い出す。

だれかに「派手だ」とか「いい年のくせに」と陰口をたたかれても「いいのよ、自分の人生なんだから」と笑い飛ばしたり、「まったく大きなお世話よね」とぷんぷんしてみたり(笑)。自分らしさを全身で楽しむ生き方は、本当に見事だった。

前を生きる伯母を見ながら生きてきたわたしは、女性は年を加えるごとに、たくましく自由になれるものなんだと思っていた。
わたしはあと数ヵ月で46歳になる。10代、20代、30代、40代を生きてくると、年齢というものが、ときに自分らしく生きることの邪魔をするものなんだなと、いくつかの経験から知ることになる。

目に見える活字や耳に届く「自分らしく生きよう」というフレーズとは真逆な、だれかが勝手に決めたボーダーラインが張り巡らされていて。こんな状態でどうやって自分らしく生きろっていうんだよ、と言いたくなる。勇気をだして自分らしい挑戦をしてみては、『ミッション:インポッシブル』並みの切れ味抜群のレーザーに触れて傷ついて、こんな痛い思いするなら、足並み揃えて前にならえ、でいいじゃん。といろんなことを諦めたくなる。
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