ピープル
神崎恵「もう、メイク落としていいですか?」
17.Aug.2019

【神崎恵連載】vol.6「幸せの味」【もう、メイクを落としてもいいですか?】

vol.6「幸せの味」

先週、歯磨きをしながら涙した。

歯茎にブラシを滑らせながら、ふと「息子たちは幸せかな? 今までは幸せだったかな?」と、一緒に過ご
した時間を思い返したら、なんだか涙がでてきた。

長男は、19歳。ひとり暮らしの準備を始め、顔を合わす時間も急激に少なくなり、「人生の中であとどれく
らい一緒にいられるのかな?」と思ったら、その時間の少なさが急に切なく感じた。もっとああすればよかった、もっとこうしてあげればよかった。止まらない「もっと」という感情。

母についても、ふと「お母さんは幸せな人生だったかな?」と。自分のことより、子どもや家族のことをなによりも優先で生きてきた母。心配ばかりかけたな。もっと旅行に行ったらよかったのに、もっと自由に、も
っと好きなことをしたらよかったのに。これもまた「もっと」が止まらない。

自分が人生を折り返したことで、考え始める、人生という時間。

最近、ふとした瞬間瞬間にそんなことを思い考えたりしている。

自分の人生も同じく。もし明日で人生が終わるとしたら、「ああ、わたしは幸せな人生だった」と言えるだろうかと自分に問いかけたりする。

もちろん今、わたしは幸せ。

愛おしい息子たちと生きがいである仕事に恵まれ、家族も健康でいる。でも、「たったひとつの人生」として考えると、ここにも「もっと」という気持ちがぷくぷくと泡のように浮かんできた。
次のページ>>先日、数年にわたり仕事をご一緒している編集者もこんな話をしていた。
25 件

キーワード

急上昇キーワード

新着記事

あなたへのおすすめ