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【マラソン 大迫傑 × 写真家 黄瀬麻以】「自分はまだまだ強くなれると思っています」

マラソン 大迫傑 × 写真家 黄瀬麻以

マラソンの自己ベストは2時間5分50秒。日本記録保持者として、東京オリンピックのヒーローになることが期待されている存在。熾烈な代表争いが繰り広げられているなか、彼はひたすら自分自身と向き合い、肉体と精神を研ぎ澄ませていた。
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SUGURU OSAKO

1991年生まれ。東京都出身。中学校時代に陸上を本格的に始め、3年生のとき、3000mで東京都中学校最高記録を出す。早稲田大学時代には箱根駅伝で活躍。

2016年6月 日本陸上競技選手権大会の5000mと1万mで優勝
2017年4月 ボストンマラソン3位
2017年12月 福岡国際マラソン3位
2018年10月 シカゴマラソンで日本新記録を出す
2019年9月 マラソングランドチャンピオンシップ3位 

2018年にシカゴマラソンで日本新記録を樹立

前半を上回るスピードでレース後半を駆け抜け、日本人初となる2時間5分台を記録。報奨金1億円を手にした。
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©AP/アフロ
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©AFP/アフロ

MAI KISE

1984年生まれ。京都府出身。日本大学芸術学部写真学科卒業。フリーランスカメラマンとして東京を拠点に、雑誌、広告などで幅広く活動している。2014年の夏からの約1年半をサンフランシスコとポートランドで過ごす。

自分の精神的に弱い部分を自覚できたことが大きな収穫になりました

9月15日に行われた東京オリンピックの日本代表選考レースの「MGC」(マラソングランドチャンピオンシップ)で、内定が決まる2位圏内には5秒届かず、惜しくも3位でフィニッシュ……。熱戦から1週間が経った晴天の日曜日、取材場所に現れた大迫傑選手は意外なほど穏やかなオーラをまとっていた。

「レース直後は悔しさもありましたが、同時に『ひとつの戦いが無事に終わった』という安堵感もありました。今は本当にリラックスしながら、心身ともにリカバリーしているところです。休める期間は限られているので、あまり予定を詰め込まないでのんびりしたいですね」

学生時代から一流のランナーだったが、2018年の10月にシカゴマラソンで日本新記録を樹立したことで、東京五輪の主力候補として国民の期待を背負う存在に。つま先から地面に足をつける「フォアフット走法」やナイキの厚底シューズを真似する市民ランナーが急増したことも、彼の求心力の高さを物語っている。8月に出版した著書『走って、悩んで、見つけたこと。』も大ヒットを記録中。

「マラソンは、メンタルを磨くことが大切な競技です。どんなにフィジカルを鍛えても出すことができるスピードには限界がありますが、メンタルは自分次第でいくらでもコントロールできる。僕はそこに世界と戦える可能性を感じているので、普段から精神面においてもできる限りの努力をしています。最近出した本を読み返すと、これまで得てきた経験や思考法を再認識できるので、僕自身が一番役立てているかもしれません(笑)。競技者に限らず、目標に向かって頑張っている方々の力になれる本だと思います」

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自分の弱さから目を背けず真摯に向き合うことが大切

先日のレースも、冷静に振り返るとメンタル面での課題が見つかったという。

「やっぱり、もう少し落ち着いて走りたかったですね。設楽悠太選手がスタートから飛ばすことは最初から分かっていたし、僕の中ではどこかで吸収できると思って逃がしていました。でも、『本当に追いつけるのかな』と、次第に疑問が出てきたりして。それが自分の心の焦りにつながってしまったので、最後に力を出し切れなかった部分があります。メンタルは改善する余地があると思いました」

失敗や反省こそ成長の近道。これまでも、マラソンを走るたびに新しい問題に直面してきた。そして、自分の弱さから目を背けず、真摯に向き合って向上させていく。それを繰り返すことでしか、精神力を鍛えることはできない。

「技術的な部分では、長い時間を走り抜くために、もう少しコンパクトなフォームに修正する必要があるかもしれません。でも、結局のところ、日本人同士だと、走りの技術や肉体的な素質は大きな差がないと思うんです。だからこそ、今回、自分の精神的に弱い部分を自覚できたことは、僕にとって大きな収穫となりました。今は『もう一度頑張ろう』という気持ちになれていますし、自分はまだまだ強くなれると思っています」
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