マラソン 大迫傑 × 写真家 黄瀬麻以

SUGURU OSAKO
2016年6月 日本陸上競技選手権大会の5000mと1万mで優勝
2017年4月 ボストンマラソン3位
2017年12月 福岡国際マラソン3位
2018年10月 シカゴマラソンで日本新記録を出す
2019年9月 マラソングランドチャンピオンシップ3位
2018年にシカゴマラソンで日本新記録を樹立


MAI KISE
自分の精神的に弱い部分を自覚できたことが大きな収穫になりました
「レース直後は悔しさもありましたが、同時に『ひとつの戦いが無事に終わった』という安堵感もありました。今は本当にリラックスしながら、心身ともにリカバリーしているところです。休める期間は限られているので、あまり予定を詰め込まないでのんびりしたいですね」
学生時代から一流のランナーだったが、2018年の10月にシカゴマラソンで日本新記録を樹立したことで、東京五輪の主力候補として国民の期待を背負う存在に。つま先から地面に足をつける「フォアフット走法」やナイキの厚底シューズを真似する市民ランナーが急増したことも、彼の求心力の高さを物語っている。8月に出版した著書『走って、悩んで、見つけたこと。』も大ヒットを記録中。
「マラソンは、メンタルを磨くことが大切な競技です。どんなにフィジカルを鍛えても出すことができるスピードには限界がありますが、メンタルは自分次第でいくらでもコントロールできる。僕はそこに世界と戦える可能性を感じているので、普段から精神面においてもできる限りの努力をしています。最近出した本を読み返すと、これまで得てきた経験や思考法を再認識できるので、僕自身が一番役立てているかもしれません(笑)。競技者に限らず、目標に向かって頑張っている方々の力になれる本だと思います」

自分の弱さから目を背けず真摯に向き合うことが大切
「やっぱり、もう少し落ち着いて走りたかったですね。設楽悠太選手がスタートから飛ばすことは最初から分かっていたし、僕の中ではどこかで吸収できると思って逃がしていました。でも、『本当に追いつけるのかな』と、次第に疑問が出てきたりして。それが自分の心の焦りにつながってしまったので、最後に力を出し切れなかった部分があります。メンタルは改善する余地があると思いました」
失敗や反省こそ成長の近道。これまでも、マラソンを走るたびに新しい問題に直面してきた。そして、自分の弱さから目を背けず、真摯に向き合って向上させていく。それを繰り返すことでしか、精神力を鍛えることはできない。
「技術的な部分では、長い時間を走り抜くために、もう少しコンパクトなフォームに修正する必要があるかもしれません。でも、結局のところ、日本人同士だと、走りの技術や肉体的な素質は大きな差がないと思うんです。だからこそ、今回、自分の精神的に弱い部分を自覚できたことは、僕にとって大きな収穫となりました。今は『もう一度頑張ろう』という気持ちになれていますし、自分はまだまだ強くなれると思っています」
