それを事前に知ることはできないのだから、日頃から目の前の人や仕事と真剣に向き合う意識を持つことが大切だ。
「僕が先輩方から教わってきたのは、努力すれば誰かが必ず見てくれているということ。役名もセリフもないような端役でも、毎公演、全身全霊で挑みなさいと。OLさんの場合も、例えば会社で雑用ばかりを任され、それがやりたかった仕事とは違っても、自分なりの工夫や美意識を注いで取り組めば、周囲は必ず見ているもの。
結果、その努力を見ていた人から、大きな仕事を任せてもらえるかもしれません。だから、おいしくない仕事こそ、全力で頑張ってみる。あざとい言い方かもしれませんが、それが良縁を引き寄せる秘訣かもしれませんね」

「下積み時代から、主役になりたいと思ったことは一度もないんですよ。僕は一般の家庭から歌舞伎界に入って、とにかく技術を覚えることが大変で、高望みする余裕がなかった。
今でも、『やってみたい役柄』を聞かれると困るんです。主役でも脇役でも、僕の任務は誰よりもその役を愛して取り組むこと。次はどんな役柄と巡り会えるか、楽しみで仕方がないですね」
