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【松下洸平ライブレポート】音楽の力を借りて、彼が届けたい言葉とは

3月6日に発売となった紙版リニューアル2号目『with』にも出演、大反響を集めた人気俳優の松下洸平さん。今、芝居づくりに携わる人が“キャスティングしたい俳優”として真っ先に名前を挙げ、多忙を極める俳優の一人だが、彼はアーティストとしての活動も精力的に行なっている。
今回は、3月頭に行われた松下洸平さんのライブ「KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2022 〜POINT TO POINT〜」の振替公演を、インタビュアーきってのエンタメ通・菊地陽子さんが独自レポート。

3月1日立川ステージガーデン 「KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2022 〜POINT TO POINT〜」LIVEレポート

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俳優は、自分ではない人間を演じながらも、いつの間にか無意識下の“自分”を曝け出してしまうことがある。だからこそ、力のある俳優は、悪役のような振り切った役や、現実にいたら腹が立つほど情けない愚かな役を演じたとしても、どこかにその人自体の魅力を香らせる。俳優・松下洸平が魅力的なのは、どんな役を演じていても、そこに彼の持つ人間力が滲むせいだろう。人懐っこくてオープンマインド。各現場で語られる、誠実で努力家な姿勢。と思えば、インタビュー時には自虐っぽいことを言ってみせたりもする。子供っぽい面と大人な視点を内在させながら、さらにユーモアのセンスもある、という引き出しの多さに驚かされる人間力溢れた俳優である。
彼のライブ「KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2022〜POINT TO POINT〜」において最初に感じさせられたのは、松下洸平というアーティストは実は“究極のロマンチスト”でもあるのではないか、ということだった。
訪れたのは3月1日の立川ステージガーデン公演。これは、昨年12月12日に中止になったステージの振替公演である。本編で披露された13曲のうち、9曲はファーストアルバム『POINT TO POINT』収録曲。オープニング曲「リズム」は、「自分の音楽のルーツはソウルやR&B」と語る彼の、そのルーツを感じさせる曲。フェイクやファルセットなど、声のメリハリが存分に活かされていて、一瞬で物語世界に引き込まれる。何より、シンガー・松下洸平の笑顔がこれでもかと言わんばかりに弾けていて、その楽しさが音楽にのって伝染していく。

2曲目の「Color of love」は松下の作詞曲。サビで、松下が左右に大きく腕を振ると、会場も一緒になって、空に伸ばした腕を、彼の動きにシンクロさせる。ステージの端から端まで走り抜けながら、「楽しむ準備はできてますか?」と叫び、ウォーミングアップなんてものはすっ飛ばすかのように、音の中に飛び込んでいく。
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3曲目の「エンドレス」は、自身で作詞も作曲も手掛けただけあって、スモーキーな声の質感から、セリフ、ラップまで、声の多彩さが際立っていた。別れの歌だが、「愛していたからバラバラ」「言葉は時に嘘臭くて」など、情景が目に浮かぶような歌詞表現とパフォーマンスに、どこか俳優らしさも滲んでいると感じた。

普段恥ずかしくて言えない言葉も、歌でなら

シングルリリースもされた「つよがり」は、タイトル通り男の強がりを歌ったバラード。「体温」は、写真集を撮影した沖縄で書いた曲だそうで、こちらもバラード。この辺りからぐんぐん声量が上がってきて、「歌が好き」という気持ちとともに、彼が生み出す物語世界が、どんどん鮮明になっていく。彼のパフォーマンスによって、きっと観客もそれぞれの過去や未来に思いを馳せている、そんな不思議な瞬間だった。誰もが、じっくりと歌に聴き入っていた。

続いてはアコースティックで2曲披露。音楽学校の先輩で、知り合って以来ずっと盟友だというギタリストのカンノケンタロウ(通称「カンちゃん」)と、昔話に花を咲かせる。八王子出身の松下は、中学のときには立川で踊り狂っていたらしく、「青春が詰まった街」と懐かしそうに振り返った。他にも、ルミネでバイトしていたエピソードや昭和記念公園で凧揚げしたこと、誰も立ち止まってくれなかった路上ライブなど、思い出話は尽きない。「あの時は誰も僕たちの音楽に興味を持ってくれなかったのに。それが、ご覧よ、カンちゃん!」と、笑いながらの軽い恨み節を叫び、松下は2400人の観客でいっぱいのステージを感動の眼差しで見つめた。

アコースティックで披露されたのは、名音楽プロデューサー・松尾潔のプロデュース曲「あなた」。切ないラブソングだが、その歌い方がなんとも丁寧で美しかった。「終わらない物語をあなたと作りたい」と呼びかける歌詞は、きっと結婚式で新郎が披露したりするのにピッタリだが、彼自身を超える誠実さや切実さは誰にも出せないのではないかと感じ入る。続く「One」も同じく松尾潔プロデュース。この2曲のラブソングを、彼は歌とギターだけのシンプルな構成で続けざまに披露し、会場はなんともロマンティックな雰囲気が漂った。そして言う。「音楽ってすごい。普段恥ずかしくて言えないセリフも、音楽の力を借りれば言えるんです」と。
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