劇中で「神」のように優しくも、その優しさゆえにどこか悲哀に満ちた主人公・田母神を演じるのは、舞台・映画・ドラマと幅広く活躍し、個性豊かな演技でお茶の間の人気を博す俳優のムロツヨシさん。今回はシュールで愉快な本来のムロツヨシ像を封印し、田母神という悲運な男の激動の瞬間を演じきった。そこで今回は、本作の見どころやご自身の考える “見返り” についてインタビューを敢行しました。
「なりたくない自分を、自らの手で生み出してしまう恐怖を感じた」
3年前に台本を読んだ時の思い、公開延期への不安

どんな人でも時の流れとともに変わってしまう、あるいは自らの意志で変わることもできるということを改めて実感した記憶があります。描いた夢、達成したい目的、心の奥底から湧き上がる野心……それらを満たせれば人は無意識的に変わってしまうだろうし、優しく手を差し伸べる人が、見返りがなくても大丈夫だったのに、いつしかそれを求めてしまう。もしくは、見返りがなくてもいいと思っていた自分が、本当は偽りの自分なのではないかと気づいてしまう。これまでなかった側面を自分自身の手で生み出してしまうというのは怖いなと思いながらも、とてもうまく描かれている作品だと思いました。
そうなんです。コロナウイルスの影響もあり、全体のスケジュールが変わってしまって。これだけ早いスピードで時代が変化している中で、YouTubeを題材に取り上げた作品を映画館のスクリーンで観る人はどう感じるのだろうかと少し不安な気持ちもありました。2022年の6月に公開するということで公開は遅れましたが、むしろ今の時代にちゃんとリンクしているんですよね。これが3年前に作られた物語だと思うとビックリします。