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【鈴木亮平】映画『エゴイスト』「演じる相手の色々な面を知って愛していけるタイプ」

エッセイスト・高山真の自伝的小説『エゴイスト』の実写映画にて主演の“浩輔”務める鈴木亮平さん。若くして母を亡くし、田舎町で同性愛者としての自分を押し殺していたが、上京して自由気ままながらもどこか虚勢を張って生きるゲイの浩輔が出会ったのは、宮沢氷魚さん演じる、母を支えて働く健気な龍太。龍太とその母との交流を描き、性別や血の繋がりなどさまざまなボーダーや、愛とは自分を救うためのエゴなのかを問う本作。“自分の想像だけで役を作るのはおこがましい気がした”という役作りから、龍太役の宮沢氷魚さんとのエピソードまで、じっくりと教えてもらった。
――映画『エゴイスト』の原作となっている、故・高山真さんの自伝的小説を読んだ時の感想を教えてください。

まずお話自体にものすごく興味を惹かれました。その先で、この高山さんという作者はどんな人なんだろうと考えたんです。そこで調べていくうちに、彼の本に描かれている、“愛”と“エゴ”というテーマは、僕が日頃ずっと思っていたことだということに気付いただけでなく、僕の大学の先輩であることもわかり、共通点が多いことに気付いたんです。

――共通点が多いからこそ、“こう演じたいな”と思うことはありましたか?

クランクイン前に高山さんにお話を伺いたかったのですが、制作が決定する直前にお亡くなりになられてしまいました。だからと言って勝手に自分の想像だけで“浩輔”を作り上げるのは非常におこがましい気がして。そこで、当時の高山さんを知る人たちにたくさんお話を聞きに行き、作り上げていきました。さらに、僕が演じる浩輔のゲイという属性に関して、どれくらいカミングアウトしにくいものなのか、いまの社会的状況などを含め、LGBTQ+全体の基礎的なところから自分なりに勉強を始めていきました。
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――勉強をすることで大事にしたのはどんなことでしょうか。

調べれば調べるほど、決まったものはもちろんなくて。性のあり方も本当にグラデーションで、すべてを位置付ける、型にはめることがわかりました。だからと言って、自分の想像だけで何かを表現したときに、それが当事者にとってどう映るのか、リアルなのか、そして、それが社会に与える影響がネガティブなもの‥‥‥例えば差別や偏見を助長したり、ステレオタイプを助長したりということにならないかということのバランスは可能なかぎり保たなければならないとも思いました。そこに関しては、監修のLGBTQ+インクルーシブディレクターの方と逐一確認しながら演じていきました。

――すごく大事なところですよね。

そう思います。そう言えば、高山さんのエッセイを読む中で、かなりの“毒”を感じたんですよ(笑)。

――たしかに、エッセイからは個性的な方だと言うことが伝わってきます。

そうなんです。ですので、なんというか、ただの“いい人”にしたくないとは思っていたんです。原作小説で主人公の浩輔はすでにまろやかに描かれていますし、映画では、浩輔が好きな人たちといる時間だけ描いているからこそ、愛のある人間に見えると思うんですが、一方で嫌いな人との関係はハッキリさせる人にしたかったといいますか。そういった頭が良くて、冷酷さも持ち合わせた人間が好きな人だけに見せる不器用な愛情を表現できたらいいなと。どの役もそうですが、その人をイメージの一面だけでとらえてしまうと、観てくださるお客さんには人間性が伝わらない気がして。なので、僕はその反対側を分厚く作っておくことが多いです。そうすることで、役の人物が見せている表の面がより複雑になり、より鮮やかに引き立てばいいなと思っているんですが。今回も、冒頭に編集者としてスタイリストさんに絡んでいるシーンがあるんですが、あの雰囲気が、実は普段の浩輔なんじゃないかなって思いながら演じていました。
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