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俳優・滝藤賢一が語る、「受け身な男」の魅力について【ドラマ『グレースの履歴』で演じた「悪気なく受け身な男」】

3月19日(日)よりNHKプレミアムにて放送を開始した話題のドラマ『グレースの履歴』。お洒落すぎる私服とファッション論を収めた初のスタイルブック『服と賢一』も大ヒット中の人気俳優・滝藤賢一さんに、最新作にまつわる秘話をスペシャルインタビュー!

面白がられて採用された

「受けの芝居」という言葉がある。
一人芝居を除けば、芝居をするときには必ず共演者がいて、衣装があって、セットがある。あまりキャラクターを作り込まずに、共演者の芝居や現場の空気の流れに任せていくのが、言ってみれば「受けの芝居」。その対極としては、「攻めの芝居」ということになるのだろうが、あまりそういった表現は使われず、「仕掛ける芝居」などと言われたりする。滝藤さんはこれまで、「受けの芝居」をあまり選択してこなかったというが、その理由は、最初に芝居を学んだ「無名塾」での経験があったからだ。無名塾というのは、仲代達矢さんが主宰する俳優養成所で、滝藤さんは1998年から9年間そこに在籍し、芝居の経験を積んだ。
「僕が入塾する前までは、男性の俳優を仲代さんの奥様の宮崎恭子さん(※演出家・女優・脚本家)が選んで、女優を仲代さんが選んでいたそうです。でも、僕が受験したときは、宮崎恭子さんが亡くなった2年後なので、僕は仲代さんに選んでもらったということになると思います。無名塾というのは“主役”を育てる集団だから、入塾試験に合格するのは、ほとんどが身長180センチ以上あるいい男。声も仲代さんに似た太く低音で、みんな若いうちから『ハムレット』を勉強する。でも、主役級ばかりだと芝居が成立しないから、僕みたいな奴は面白がられての採用だったんでしょうね(笑)。だから『ハムレット』の稽古をした記憶はありません」
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主役こそが「受けの芝居」で輝くポジション。確かに、物語のヒーローは、常にさまざまな逆境に立ち向かい、傷つきながら成長していく。自分からトラブルを仕掛けていく主人公も存在するが、ごくごく少数派なのだろう。
「例えば、殺陣のシーンなんかもそうですよね。主役とか、強い役ほど動かないんですよ」と、やや熱を込めながら語ってくれた。

「無名塾では多くのことを学びましたが、特に印象に残っているのは、余計なことをしない、存在感だけで魅せられるような“引き算の芝居”なんです。相手のセリフを受けてのリアクションこそ芝居には大事だと思うんだけど、当時の僕は、それじゃあ生きていけなかった(苦笑)。だから、映像作品に出るようになってからも、芝居では足し算しまくって生きてきたんです。誰もやらないことをやって面白がられることが自分の個性だと思っていたし、実際、そういうクセのある役をたくさんいただけるようになった。だけど、主演のお話をいただけるようになってみると、やっぱり引き算というか存在感で勝負したいな、と。あ、でも『探偵が早すぎる』は、足し算しまくっちゃってますけどね(笑)」
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