幼い頃から“枠組み”や“概念”に押し込められるのが苦手だった
にしなさん(以下、敬称略) はい。人には本能があって、そこに身体の仕組みが作用してくるのかもしれないですけど、人を好きになる気持ちはそれとは別の、もっとピュアなものだと思うんです。そんなピュアな気持ちを「バグ」と言うのは人としておかしいと思ったし、その嫌悪感から感情的になってしまって。わたしは感情的になるとうまく感情を伝えられないから、冷静な相手と感情的なわたしの会話が平行線だったんです。
――それを言ったのが自分が好きになった人だというショックも計り知れません。
にしな ……そうですね。「あれ? わたし、この人のことを好きなの?」って。感情的になったのは、それも大きかったと思います。ひとりになったときに、冷静になったら思っていることをうまく伝えられるかもしれないなと思ったし、何よりこのことについてもっと考えたかったんです。だから曲を書くに至りました。歌詞を書きながら「“愛”ってなんなんだろう?」とじっくり考えていきましたね。
にしな 幼い頃から「○○は○○でなければいけない」という枠組みや概念に押し込められるのが苦手で、それがジェンダーという学問に通ずるなと思って講義を選択しました。「女の子はスカートを履くべき」のように小さい固定観念は生活のなかに多々あって、そういうものに無意識のうちに影響を受けながら、わたしたちの思考回路はでき上がっているんですよね。一人ひとりまったく違う人間だから、人それぞれ何かしらのカテゴライズはあるものだと思うんです。だから自分のそれを他者に押し付けるのは違うと思うんですよね。
――そうですね。正義は人の数だけあるとよく言いますし。
にしな 「僕はこう思うんだ」「あなたはそうなんだね。わたしはこう思うんだ」といったのように、“語り合う”ことは全然いいんです。でも、自分の考えを無理やり押し付けられてしまうと苦しい。だから自分もそんなことをしない人間でいられたらいいな……とは思いますね。