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「“女の子なんだから”と押し付けられるのが幼い頃から苦手だった」今、大注目アーティスト・にしなが楽曲に込めた思い<インタビューvol.2>

「儚さと狂気」を内包する天性の歌声を持つ、1998年生まれのソロアーティスト・にしなさん。全3回のインタビュー第2弾のテーマは、10月にリリースされた「夜になって」について。当時好きだった人の発言に大きなショックを受けたことで生まれた同曲は、LGBTQ+を含むこの世の様々な愛がテーマになっています。「概念を押し付けられたくはない」と語るにしなさんが感じるカテゴライズや、人を愛する気持ちについて話していただきました。

幼い頃から“枠組み”や“概念”に押し込められるのが苦手だった

――2021年10月にデジタルリリースされた「夜になって」はLGBTQ+を含む、この世の様々な愛がテーマになっています。にしなさんが20歳頃に作った楽曲で、当時好きな人が「同性愛は染色体のバグ」と発言したことへの嫌悪感がきっかけになっているそうですね。

にしなさん(以下、敬称略) はい。人には本能があって、そこに身体の仕組みが作用してくるのかもしれないですけど、人を好きになる気持ちはそれとは別の、もっとピュアなものだと思うんです。そんなピュアな気持ちを「バグ」と言うのは人としておかしいと思ったし、その嫌悪感から感情的になってしまって。わたしは感情的になるとうまく感情を伝えられないから、冷静な相手と感情的なわたしの会話が平行線だったんです。

――それを言ったのが自分が好きになった人だというショックも計り知れません。

にしな ……そうですね。「あれ? わたし、この人のことを好きなの?」って。感情的になったのは、それも大きかったと思います。ひとりになったときに、冷静になったら思っていることをうまく伝えられるかもしれないなと思ったし、何よりこのことについてもっと考えたかったんです。だから曲を書くに至りました。歌詞を書きながら「“愛”ってなんなんだろう?」とじっくり考えていきましたね。
――この曲を制作した後、にしなさんは大学でジェンダーについても学ぶようになったとのことで。

にしな 幼い頃から「○○は○○でなければいけない」という枠組みや概念に押し込められるのが苦手で、それがジェンダーという学問に通ずるなと思って講義を選択しました。「女の子はスカートを履くべき」のように小さい固定観念は生活のなかに多々あって、そういうものに無意識のうちに影響を受けながら、わたしたちの思考回路はでき上がっているんですよね。一人ひとりまったく違う人間だから、人それぞれ何かしらのカテゴライズはあるものだと思うんです。だから自分のそれを他者に押し付けるのは違うと思うんですよね。

――そうですね。正義は人の数だけあるとよく言いますし。

にしな 「僕はこう思うんだ」「あなたはそうなんだね。わたしはこう思うんだ」といったのように、“語り合う”ことは全然いいんです。でも、自分の考えを無理やり押し付けられてしまうと苦しい。だから自分もそんなことをしない人間でいられたらいいな……とは思いますね。
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