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【黒柳徹子】人前に立つことが苦手だった少女が、俳優の仕事を「社会的な使命だ!」と感じるまで

テレビドラマに出演していた頃の私の役柄で、一番話題になったのは、NHKの連続テレビ小説「繭子ひとり」の家政婦役ではないかと思います。青森出身の家政婦・田口ケイを演じたのですが、それまでのテレビドラマにおける役柄の枠組みを変えたとまで言われました。

私が田口ケイを演じるまでは、テレビに出る俳優は、その人本来の見た目を生かした姿で出演するのが常でした。ただ、私は、「船員だった夫に先立たれ、小学校5年生の息子と母親を養うために青森から上京して家政婦になった中年女性」という役をいただいたとき、「黒柳徹子が演じているとわかったら面白くない」と思ったのです。

田口ケイの出身地が、私が疎開したときお世話になった青森県だったこともあって、できるだけうまくやりたいとも思いました。それまで私が演じてきた役柄は「都会のお嬢さん」というものがほとんど。一体どうしたら家政婦さんに見えるだろうか。私はあれこれ考えました。

そこで思いついたのが、髪型です。一生懸命働いているから、お金のかからない、手のかからない髪型なんじゃないか。NHKの床山さんと呼ばれるヘアの担当者がいたんですが、その女性の髪型がまさにぴったりで。切りっぱなしの短い髪に、パーマネントをかけた、雀の巣のような髪型! 

私の顔だとわからなくするためと、働き者の感じを出すために、度の強い眼鏡をかけて、野暮ったさを出すために、衣装の下にいっぱい綿を詰めてふとらせました。寒いところから来たことを強調するために、ほっぺも赤く染めました。
その格好で NHKの食堂に行っても、誰も私だと気づきません。コーヒーを飲むときも、普通ならウエイトレスさんが「アイスですか? ホットですか?」と聞いてくださいます。それがオバサンの格好で行くと、途端にぞんざいな口調で「アイス? ホット?」となる。

当時できたばかりの一万円札なんて渡そうものなら、本物かどうかジロジロ調べられたり。トイレに並んでいても、後から来た若い女の子に先に入られてしまう。オバサンの扮装をするだけで、世の中にはこんなにも見た目による差別が横行しているのかと気づいたのです。
私は扮装をとったら元の黒柳徹子に戻れます。でも、このオバサンは家族を養うということに一生懸命で、見た目だけで雑な扱いを受け続けてしまう。人は見かけで判断されるということが身をもって体験できた私ですが、逆を言えば、どんなに冴えないオバサンでも、努力次第ではキレイになるかもしれない。

田口ケイという役を通して私は、人は無意識のうちに見た目で判断されてしまう世の中の非情と、どんな人間も化けることができるという人間の希望の両方を感じたのでした。

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撮影/下村一喜(アジャンスヒラタ) スタイリスト/大野美智子 ヘア/松田コウイチ(MAHALO) メイク/MAHIRO 取材・文/菊地陽子 協力/アワビーズ、バックグラウンズファクトリー 衣装/本人私物 ●再構成with online編集部 
 
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