山崎育三郎【はなうたまじり】
今回のゲストは「モーツァルト!」で育さま演じるヴォルフガング・モーツァルトの父、レオポルトを演じた市村正親さん。前編では、市村さんがこの世界に入るきっかけや、劇団四季で『オペラ座の怪人』のファントム役を射止めるまでのお話を伺いました。
【市村正親さんと親子語り】後編

『オペラ座の怪人』の降板が、逆にプラスの転機になった
■市村 42歳だったね。ファントムを下ろされたのがきっかけで。ちょうどその前にロンドンで『ミス・サイゴン』を観ていて、日本での上演も決まっていて。だから、“今だ”と、四季を辞めて『ミス・サイゴン』のオーディションを受けて。
■山崎 凄まじい人数が受けに来ますよね。
■市村 でも僕は本気だったからね。オーディションの部屋に入ってきた瞬間、“エンジニア”が来た!と思ったと、後で聞いたよ。
■山崎 そこでエンジニア役を獲得して、1年半のロングラン。
■市村 しかも1年半のうち6ヵ月は一人でやったんだ。週10公演を。
■山崎 それほどのロングランってどんな感じですか?
■市村 とにかく役がいいから、1回1回が楽しくてしょうがなかったよ。
■山崎 それを30年間。
■市村 もう今じゃ初演から同じ役を演じているのは僕しか残ってないね。でもエンジニアって、年齢があってないような役だから。
■山崎 当初と今では感覚が違うのでしょうか?
■市村 最初のうちは“こいつは泳いででもアメリカ大陸へ渡るな”って感じだったけど、今じゃあ“サメに食われちゃうだろうな”と思う(笑)。でも、そんなエンジニアがいてもいいと思うんだよ