私たちはもっと気楽に生きられる――。比べなければ、ほら、堂々と私の顔で立っている。みんな、「絶対値」で生きよう、一緒にさ。仕事人・母・妻として小島慶子さんが感じたココロ60選が収録されています。
with onlineではその中から、with読者向けに抜粋したコラムを、水・金の週2回配信! 今回は「クラウドで安心?」がテーマのコラムをお届けします。

クラウドで安心?
「本当に思うんです。私たち、見た目も仕事も人並み以上に頑張っているはずなのに、なんで幸せになれないのかって……」もうすぐ30歳になる彼女は大きな目をますます大きくして言います。「男に舐められないようにとか、男ウケするようにとか色々頑張ってきたのに、結局いい男がいないってどういうことよ、約束違うんですけど、って感じです!」
どうやらちょっと下に見ていた男が、こちらが若くなくなると急に上から目線で「だからお前モテないんだよ」とか言ってきて腹立つとか、元彼より私の方が優秀だったのに今はあいつの方が出世しているのは納得がいかないとか、オトコ社会で生きる女子ならではの塩辛い現実もあるようです。
そんな時にも愚痴を言い合える色々心強い女友達。でも、もしかしてこの人たちとつるんでいるから変に気を遣ってしまって結婚できないのか? とか、なんか色々思うところもある様子。いわゆる仲良しグループ的な付き合いの友人がいない私からすると、『東京タラレバ娘』で描かれているような人間関係は、ちょっと羨ましいような面倒くさそうなような気がします。そう告げると、彼女はため息をつきました。
「確かに、何もかも女友達に話す子って、全然幸せじゃないんです。何も自分で決めない。全部友達頼みです。頼られる私たちだって本当のことは言えないですし。結局、みんな自分のことしか考えてないんですよね」おお、それはなかなか正直な告白。
「でも、やっぱり女子会は必要なんです。友達に話を聞いてもらって、クラウドに上げているんですよ。返事が親身かどうかじゃなくて、この人は私の全部を知っていると思えるかどうかが大事なんです」……女子会は、クラウド??
「だから、起きたことをぜんぶ誰かに話しておけば、つまりクラウドに上げておけば、自分の人生という物語が消えないじゃないですか。誰かに見ていてほしいんですよ」なななるほど、見ていてほしいって、わかる気がするかも。
「でも、もちろん他人の人生にそこまで興味ないし覚えられないので、みんな適当に話を合わせて、言ってほしそうなことを言ってあげるだけなんですけどね」ならいっそ、女友達に義理立てして恋のお話の聞き手になる時間を減らして、がっつり男を取りにいけばいいのでは?
「わかってます……でも、私もクラウド欲しいんです。この人たちは私のこと全部知っているから安心、っていう場所が欲しい」そう言って彼女は、おろし蕎麦を啜りました。
とにかく誰かに話しておきたい。自分の人生をクラウドに上げるみたいに、か。私のクラウドは、夫かも。いつも一方的に話してばかりの気がして、ちょっと反省したのでした。

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