私たちはもっと気楽に生きられる――。比べなければ、ほら、堂々と私の顔で立っている。みんな、「絶対値」で生きよう、一緒にさ。仕事人・母・妻として小島慶子さんが感じたココロ60選が収録されています。
with onlineではその中から、with読者向けに抜粋したコラムを、水・金の週2回配信! 今回は「憧れと嫉妬」がテーマのコラムをお届けします。

憧れと嫉妬
中学生の時、嫉妬で苦しくなったことがありました。必死に勉強して入った女子校には、いわゆる先祖代々のお金持ちや名家のお嬢様が何人もいて、しかも彼女たちはみんな可愛く、性格も素直で、友達にも好かれていたのです。
ええー、となんだか納得いきませんでした。自分は小学校4年の時から夜遅くまで塾に通って、泣きながら勉強してやっと受かった学校に、毎日2時間近く満員電車に揺られながら通っているのに、この子達は幼稚園の時に気がついたら名門校に入っていて、なんの苦労もせず都心のお屋敷から通学しているなんて。努力したら報われる、って親にはさんざん聞かされてきたけど、そんなの噓じゃん! 三代前から生まれ直さないと、とても追いつけないよ!
で授業中、そんな子達のかたちのいい頭から伸びたさらさらの髪を後ろからじっとりと見つめながら、「明日の朝ニキビだらけになっていますように……」と暗く念じたりしていました。けれど翌朝もまた、私は鼻の下のニキビに薬を塗り込み、その子はすべすべの頰をバラ色に染めて登校するのです。嫉妬すればするほど惨めな気持ちになって、神様を恨みました。世の中はなんて不公平なんだ、って。
だから今、街を行く女の子がどんよりした顔をしていると、「ああ、しんどいだろうなあ」とあの頃を思い出すのです。どうしてみんなは恵まれているのに、自分は……なんて劣等感と悔しさでいっぱいだったあの頃。10代の狭い世界では、比べる対象もごく限られていて、自分のいいところも過小評価しがちです。
どうか彼女が楽になれますように。はたから見たら、あなたとイケてる子の違いなんて大したことなくて、あなたが貧乏くじを引いたってわけでもないんだって、あと数年もしたらわかるんだよ。
仲間と同じ制服を着て、同じ教室で生きる「平等な」世界の中では、ちょっとの違いがすごく大きな差に感じられるものです。だけど、やがて制服を脱ぎ、バラバラの時間割を生きるようになって、ちょっとずつ気がつく。ああ、最初から、全員違っていたんだって。
比べても意味ないじゃん。どう生まれてくるかなんて、誰も選べなかったんだし、と。
よく考えてみると殆どの場合「あの人が幸せなことが原因で、自分が損をしている」という因果関係はありません。だったら人を呪うより、自分が少しでもましな気分になれる場所を探す方がいいですよね。羨んでいるだけでは不毛です。憧れと嫉妬は背中合わせ。その線引きができるようになるのが、大人になるってことかも知れません。

12月13日より好評発売中!
絶対☆女子 | 小島 慶子 |本 | 通販 | Amazon
