ピープル
小島慶子「令和女子のための新・教養」

【短期連載・小島慶子の「絶対☆女子」vol.7】心の男子

講談社コミック『Kiss』で圧倒的共感を得た小島慶子さんの等身大エッセイがついに書籍化しました!!

私たちはもっと気楽に生きられる――。比べなければ、ほら、堂々と私の顔で立っている。みんな、「絶対値」で生きよう、一緒にさ。仕事人・母・妻として小島慶子さんが感じたココロ60選が収録されています。

with onlineではその中から、with読者向けに抜粋したコラムを、水・金の週2回配信! 今回は「心の男子」がテーマのコラムをお届けします。
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『絶対☆女子』著:小島慶子 発売日:2017年12月13日 定価 :本体920円(税別)

心の男子

エスカレーターで、すぐ前に30代前半ぐらいの男女が乗っていました。私の2段上に女性、その2段上に男性。女性は腰にリボンのついたパステルピンクのコートに、小さな花とフリルのついたベージュのバッグを持ち、カラーリングしていない髪を背中まで伸ばしてリボン型のバレッタで留めています。黒いタイツにくるみボタン付きの茶色いショートブーツ、内股のあどけない立ち姿。男性は黒いジャンパーにデニム、ウエストバッグ、中肉中背で温厚そうな丸顔。半身を振り向けて、彼女の話に盛んに相槌を打っています。

喋っているのはもっぱら女性です。柔らかく高い声で、語尾はあどけなく半音上がって、心もとなげに男性の反応をうかがうような、思わず「うん、うん、大丈夫だよ」と励ましたくなる可愛らしさ。昨日誰と会ってねぇ、こんなものを食べてねぇ、と無邪気にまとわりつく子猫のようなお喋りです。

二人は付き合っているのでしょうか。まるで小学生男子のイメージする「おんなのこ」のすべてを集約したような彼女は、一体どんな下着をつけているのだろうと、つい想像してしまいます。

正直言って、男性はかなり地味。でも、彼女の声だけ聞いていると、どんな素敵な王子様がいるのかしらと思わず顔を上げてしまいます。「ねえねえ、こっち向いて、私を見て、あなたに守られたいの」という甘い甘いお喋りは、どんな男性もキラキラした王子様に変えてしまう魔法の調べなのです。

こんなふうに話しかけてくれる女性といたら、誰だってかっこいいヒーローみたいな気分になれるでしょう。彼が何か言うと、リボンの彼女は両手でバッグを提げながら、うふふ、と身体を傾けて笑いました。

きっとメイクはそれほど上手くないはずの女性の顔を想像しながら考えました。彼女は「永遠のおんなのこ」なのだと。女の思うモテ女ではなく、男子の頭の中に刷り込まれた女の子のイメージをなぞって獲物を仕留める狩人です。それもイケメンに絞るなんていうケチな戦略ではなく、あらゆる男に分かりやすい女の子を体現して、ターゲットを最大限に広げておくという本気のアプローチ。

モデルや女優を目標にメイクやファッションを磨く女たちを尻目に、彼女たち永遠の女子は、すべての男子の脳内に生きる小学生に訴える手法を選択したのです。同性の支持はいらない。おしゃれな女に飼い馴らされて化粧やファッションの読解力を持ってしまった男たちも対象外。たとえダサいと笑われようとも、最初から「女の子らしさ」のユニバーサルデザインを体現する勇気! 洗練よりも獲れ高を選ぶ潔さ!

女が憧れる女になり、女が羨む恋人を手に入れようとすると、結局「女にもてる男と付き合う」という狭いマーケットでの競争に身を投じてしまうことに、彼女たちは早々に気づいたのですね。考えてみれば、本当に男を狩りたいならば、女からの評価なんて何の腹の足しにもなりません。リボンにフリルにパステルピンクは、リアリストの証明なのです。
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<B>小島慶子さん</b><br> タレント、エッセイスト。<br> 仕事のある日本と、家族と暮らすオーストラリアのパースを3週間ずつ往復する出稼ぎ生活。『るるらいらい』(講談社)、『解縛』(新潮社)、小説『わたしの神様』(幻冬舎)、小説『ホライズン』(文藝春秋)など著書多数。
with onlineでは引き続き、with読者向けに抜粋した『絶対☆女子』のコラムを、水・金の週2回お届けします。チェックしてね!
はじめに
女の視野はウマより広い
ダメ出し女子
憧れと嫉妬
女の見た目
クラウドで安心?
心の男子
自意識にサヨナラ
変化なし…?
・女を謳歌しよう(1/12UP)
・埋蔵セクシー(1/17UP)
・振り向けばタラレバ娘(1/19UP)
・From圏外with Love(1/24UP)

12月13日より好評発売中!

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