ピープル
小島慶子「令和女子のための新・教養」

【短期連載・小島慶子の「絶対☆女子」vol.13】From 圏外 with Love

講談社コミック『Kiss』で圧倒的共感を得た小島慶子さんの等身大エッセイがついに書籍化しました!!

私たちはもっと気楽に生きられる――。比べなければ、ほら、堂々と私の顔で立っている。みんな、「絶対値」で生きよう、一緒にさ。仕事人・母・妻として小島慶子さんが感じたココロ60選が収録されています。

with onlineではその中から、with読者向けに抜粋したコラムを、水・金の週2回配信してきましたが、今回が最後の配信です。
pattern_1
『絶対☆女子』著:小島慶子 発売日:2017年12月13日 定価 :本体920円(税別)

From 圏外 with Love

最近私の友人で、長い間友達だった男性と付き合い始めた人がいます。そこで「友情が性愛になった境目はどこだ」と尋ねてみました。圏外にいたのに、ある日急にアンテナ立っちゃったのは何故なのだと。

そんなこと聞くなんて、お前40歳過ぎてバカかと思うかもしれませんが、いつ死ぬかわからないんだから、知りたいことぐらい聞かせてくれ。そしたら「いや、前からちょっとそうなのかなとは思っていたけど、うまくかわしていたら、ある日突然キスされて」という王道の回答でした。ええっ、私その「不意打ちのキス」ってやつ、漫画にしかないのかと思ってたよ。しかも引きとめられて「僕は本気だから」と見つめられるという素敵すぎる展開で、小田和正のギターがチャララーンって頭の中に鳴り響きました。昔あったんです、そういうドラマが。

くそう。なんだそのロマンスフルな人生……彼女はモテモテで、私がとても羨んでいる友人の一人なのですが、以前にも「思いがけず年下に告白されて」と恋愛貴族発言をしており、ロマンス資本の偏在を感じずにはいられません。

ああ、告白されたい。人生でたった一度だけ告白された時には、17歳で処女だったから気が動転して断ってしまった。今でも悔やんでいます。今からでも、一度でいいから、抜き打ちで告白されてみたいものです。

けれどこの友人のように、告白されても嫌じゃないかもしれないエリアから奇襲をかけられたら、付き合ってしまうかもしれません。それはこのセンテンススプリングの時代に、人妻にはリスクが高すぎる……となると、私に告白してくれる相手は、告白されてすぐに会えなくなるという設定がいいでしょう。
「実は俺、今まで隠してたんだけどスパイで、もう日本にはいられなくなるんだけど、最後に言いたいことが……」とかでしょうか。でも彼がスパイだと知った時点で私も超大国に消されそうですから、それは嫌すぎる。「実は俺これからカチコミにいくから、生き残れたら府中に面会しに来てな」はいろんな意味で重たすぎです。

そういえばイーロン・マスクが、火星を温暖化するためには核ミサイルを使ってだな、とまたすんごいスケールの話をぶち上げていましたが、人工的に火星に磁気シールドを張って人が住めるようにする計画もあるらしいし、そろそろつくばあたりからも火星に移住する第一団が密かに派遣されそうな感じではあります。「俺、火星に派遣されるからもう会えないけど、寂しくなったら空を見てね」とかはどうでしょう。これはとてもいい。尋常じゃなくときめくし、死ぬまで日持ちします。しかしいったい、極秘火星計画の構成員にどこで知り合えるというのでしょう。万が一知り合えたとて、その後、告白されるまでどう持っていけばいいのかわかりません。

まあこうして友人の恋の話でワクワク妄想を膨らませるぐらいが、せいぜい私のお楽しみなわけですが、6年あまり続いたこの連載もこれで最終回です。ラブ・ストーリーも、最終回も、突然に。あの日、赤坂で私に「連載しませんか」と思いを訴えてくれた担当のサコさんには、心から深く深く感謝しております。今までお読みくださってありがとうございました。ではまたどこかで!
あとがき

この本は『Kiss』に連載していた同タイトルのエッセイをまとめたものです。普段「女子」という言葉は使わないのですが、あえてタイトルにしました。○○女子とか、女子会とか、なぜか目につく女子くくり。世間の眼差しは女であることを忘れさせてくれません。

男女平等を謳いつつも実態はそうなっていない組織もたくさんあります。「え、これってつまり私が女だから!?」と憤慨したり、しょうがないかと諦めたり。年齢や見た目のことをあれこれ言われるのも相変わらずです。だったらいっそ女子をネタにしてポジティブにやっていくしかないよね! という気にもなります。
「絶対」は数学で習った絶対値をイメージしています。0という基準に照らしてプラスかマイナスかを、生身の人間でやるとしんどいものです。女という要素は一人一人固有のものなのに、なぜか男性目線で自分にダメ出ししたり、他の女性との比較で計ってしまいがち。それが自分のすべてを表すと思うと、息が詰まってしまいます。他はどうだか知らないがこれが正味の私だと開き直れば、少しは気が楽になるかもしれません。
pattern_1
そんなことを考えてスタートした連載ですが、実際には身辺雑記のような形でゆるゆると6年間、思いつくままに書きました。年齢的には38歳から44歳にかけて。キャリア面では、15年勤めた会社を辞めた直後からの6年あまりです。東日本大震災や、個人的には海外への引っ越しなども経験しました。

そして恐ろしいことに、毎号イラストを描いたのです。そんな企画を思いついた『Kiss』編集部もどうかと思いますが、深く考えずに引き受けた私も迂闊すぎます。錚々たるプロの作品の間に自分の落書きが載っているのを見て、これは誌面への冒凟だと思いました。本当にごめんなさい……。

こうして読み返してみると、その時々に考えていたことが思い出されて興味深いです。6年なんて大した長さじゃないのに、人って結構変わるものなんですね。時代の変化に連れて古くなってしまった部分などは、本にするにあたって修正しました。とりとめのない話ばかりを、最後までお読み下さって有り難うございました。

小島慶子
pattern_3
<B>小島慶子さん</b><br> タレント、エッセイスト。<br> 仕事のある日本と、家族と暮らすオーストラリアのパースを3週間ずつ往復する出稼ぎ生活。『るるらいらい』(講談社)、『解縛』(新潮社)、小説『わたしの神様』(幻冬舎)、小説『ホライズン』(文藝春秋)など著書多数。

12月13日より好評発売中!

11 件

キーワード

急上昇キーワード

新着記事

あなたへのおすすめ