私たちはもっと気楽に生きられる――。比べなければ、ほら、堂々と私の顔で立っている。みんな、「絶対値」で生きよう、一緒にさ。仕事人・母・妻として小島慶子さんが感じたココロ60選が収録されています。
with onlineではその中から、with読者向けに抜粋したコラムを、水・金の週2回配信! 今回は「自意識にサヨナラ」がテーマのコラムをお届けします。

自意識にサヨナラ
「30代って、どんな感じですか? 私、彼氏もいないし、仕事も中途半端なのに、もう20代終わっちゃうんです……」
そうか、20代終わりになると、30歳を目処に結婚やら仕事やらいろいろとステップアップしなくちゃ、と焦るんですね。
あなたはどうでしたか? 周囲と見比べて、出遅れたとか、落ち目だとか、思いましたか?
私は37歳まで局アナの仕事をしていたのですが、さすがに週刊誌が作った「女子アナ30歳定年説」を真に受けて悩む人はいないだろうと思っていました。ところが、実際に30歳が近づくと、20代のうちに一花咲かせなくちゃと焦ったり、もうあとは先細りだと見切りをつけたりする人がいることがわかったのです。
私は年上に囲まれて育ったおかげか、むしろ早く大人になりたいと思っていました。20代はちやほやされるけど一人前扱いされないし、おみそのようで歯がゆい思いをすることも多くて、悔しい思いばかり。〝みんなに可愛がられる妹ちゃん〟のようにふるまうことも上手にできませんでした。
まず、背が高いので男性スタッフより大きく、可愛くない。
顔がいかつい。
早口でよく喋る。
態度も厚かましい。
これではいわゆる〝女子アナ〟的要素が少なすぎます。「愛される」はずがありません。とんだ職場に来てしまったと気づいたときは後の祭り。
周囲の人の活躍を見ながら、自分の適性のなさを早くに思い知ったのもよかったのかもしれません。私は若くて可愛い女子アナとして成功する素質はない。だから、早く一人前に扱われる年齢になりたいと思いました。
会社からは「30歳になったら現役引退」なんてもちろん言われませんし、実際、私は30代で好きな仕事をたくさんさせてもらえたのですが、人によっては20代で華やかな実績を残そうと焦ったり、あるいは実際に脚光を浴びてしまうとそれを失うのが怖くなって、どうも30歳以降はお先真っ暗に思えるようなのです。たぶん周囲ではなくて、彼女たち自身が「おばさんには価値がない」と思っているから陥る心理なのでしょう。そう思わせている呪いのなんと多いことよ。
30代は、自由になるための10年でした。仕事の経験を積んで人から信頼されるようになり、自分の生まれ持った適性を生かすすべを知り、心許せる人びととの関係を少しずつ積み重ねて、気づいたらふっと楽になっていた。もちろん、じたばたしながらの10年でしたけど、40歳の今が一番のびのびしています。
冒頭の彼女に言いました。
「30代はね、今より呼吸するのがずっと楽になるよ」
すると少しだけ、彼女の眼差しが明るくなりました。それは20代にしがみついている顔よりも、ずっと素敵な笑顔でした。


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