ピープル
小島慶子「令和女子のための新・教養」
29.Oct.2019

「あなたのために」は支配欲を隠すための枕詞。言われた時は用心しなくちゃいけません【小島慶子の令和女子のための新・教養】

「あなたのためを思う」より 「あなたを思う」人に

この痛恨の一件を機に、「あなたのために」をやめました。振り返れば、私が悩みのどん底にいた20代の頃に望んでいたのは、「あなたのために」じゃなくて、「いつでも話を聞くよ」って言ってもらうことでした。欲しいのはアドバイスじゃなくて、避難所だったんですよね。出入り自由で、安心して弱みを見せられる場所。

恩着せがましく説教するのはその逆で、相手を宿無しにして自分の信者にしようとする心理の表れです。人には多かれ少なかれ教祖願望があって、熱烈な信者を求める気持ちを密かに抱えています。それを恋人に対して発揮するのか我が子に向けるのか、はたまた職場でやるのか。

「あなたのために」は支配欲を隠すための枕詞。だからそう言われた時は用心しなくちゃいけません。たとえ恩のある親でも、優しい恋人でも。何しろ当人が自覚していませんから、タチが悪いのです。
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気にかけている後輩には、チャンスをあげるのがいいと思います。人脈を繫ぐとか、会合に誘うとか、仕事の一部を任せるとか、気軽な感じで。そうやって声をかけてもらうだけでも嬉しいものです。

あとは、真面目に話を聞いてあげること。ネットでたくさんシェアされていたある動画では、まだ言葉が話せない1歳ぐらいの子どもとソファで一緒に映画を見ているお父さんが、子どもの「あーあー」という声に、真剣に受け答えをしていました。「うん、そうだね、ほんとすごいよね」「僕もそう思うよ!」など、傍目にはまるで会話が成立しているみたい。

私も息子たちと随分とそんな会話をしました。大丈夫だよ、あなたの言いたいことはちゃんと聞いてるよ、って伝えたくて。伝わっているんだ! 聞いてもらえるんだ! と思えることってすごい安心感だと思うんですよね。これは大人も一緒です。

「あなたのためを思う」より「あなたを思う」のほうが深い。アドバイスよりも傾聴を。本当に親身になってくれる人は、案外近くにいるのかもしれません。
小島慶子
こじまけいこ・タレント、エッセイスト。
東京大学大学院情報学環客員研究員。ふたりの男の子のママ。オーストラリアのパースに住み、日本と行き来しながらお仕事中。DMMオンラインサロン「 小島慶子 つながるサロン」もスタート。
文/小島慶子 イラスト/MASAMI ※再構成 with online編集部
 
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