私たちはもっと気楽に生きられる――。比べなければ、ほら、堂々と私の顔で立っている。みんな、「絶対値」で生きよう、一緒にさ。仕事人・母・妻として小島慶子さんが感じたココロ60選が収録されています。
with onlineではその中から、with読者向けに抜粋したコラムを、水・金の週2回配信! 今回は「変化なし…?」がテーマのコラムをお届けします。

変化なし…?
小学校卒業以来会っていない友人と、中学から大学の途中まで一緒だったけどそれきり会っていない友人と、偶然仕事場で出会ったのです。そこで、これも不思議な縁だからと、改めて3人で会うことに。小学校が同じだった彼女と私は違う中学に進み、その中学校で出会ったもう一人の友人とは、大学3年から会っていませんでした。
四十女が3人でランチしながら、中学受験の塾通いの思い出話をしたり、高校の文化祭を懐かしんだり。同じ職場で働く二人はうわさ話で盛り上がり、私はそんな二人を新鮮な気持ちで眺めました。
目の前の二人はちょっとした仕草や喋り方が記憶の中のあの頃のまま。それに引きかえ私はずいぶん変わってしまったなあと思っていたら、二人は口を揃えて、
「あなたもあの頃と変わっていないわね」
と言いました。
ええっ? 12歳の頃の私と、20歳の頃の私と、40歳の私が同じ? もちろん、見た目が変わっているのは当然だけれど、性格がそのままだと言われたのには少なからず衝撃を受けました。
私は少しでも洗練されたくて、欠点を直したくて、たくさん失敗をしながらリニューアルを重ね、改良を加えてここまで来たのではなかったのか。悪い癖を直し、古い自分を脱ぎ捨ててようやくここまでたどり着いたんじゃなかったっけ。
それが、担任の先生ににらまれていた小6のころと同じ? 今会ったらうんざりしそうな自意識過剰の20歳の頃と、何も変わらないなんて。今までの努力は一体なんだったのだろう……!?
「あなた変わったわね、ってがっかりされるよりはいいじゃないですか」と知人が慰めてくれましたが、複雑です。
周囲とぶつかってばかりだった十二歳、自分のことしか見ていなかった二十歳。あの頃の渇きやもがきを思い出すと、今も他人からそんなふうに見えているならツラいなあ、という気持ちにもなります。もっと自分とうまくやりたかった、自分のことなんか何も気にならないぐらい、居心地のいい場所が欲しかったのです。40歳の今、ようやくそうした自分のありように思い悩む煩わしさから解放され、晴れ晴れとした気持ちでいたのに。
「どこが変わっていないの?」と尋ねると、思ったことをポンと言ってしまうところ、とのこと。そうかあ……それをなんとか社会に適応させようと思って結構、努力したんだけどなあ。ポンと言っているわけじゃないんだけどなあ。
なりたい自分になれなくたって生きていけることは学んだけれど、こう改めて言われるとちょっと複雑でした。
でもきっとそれは、悪いことじゃない。家族も友人も、そんな私と一緒にいてくれます。生まれ持った特性は誰にも選べないけど、本人が気に入っていなくても、他人は愛着を持ってくれることがあるのかも知れないなと、少し希望が持てたのでした。

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