乗船したら半年は海の上!【船乗り母さんの妊娠・出産・子育て】夫との分担体制の実態は?

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乗船したら半年は海の上。“船乗り母さん”の妊娠・出産・子育て

日本の大手海運会社で初! 外航船の“女性船長”になった川崎汽船の野口枝里さん。一度乗船して海に出ると約半年は海の上、という野口さんですが、実は6歳の男の子の母。子どもの頃からの夢を叶えた航海士という仕事を続けるにあたり、どんな生活スタイルで、どう子育てをして、夫とどのような家庭を築いているのか…… 謎に包まれた“船乗り母さん”を取材しました。

第1回目は、まだまだ男性中心という業界で、女性であるがゆえにハードルだったという【妊娠・出産・子育て】にフォーカスします。そもそも女性航海士の出産自体が社内では前例がなかったとのこと。数々の“女性初”に直面した野口さんが、悩みながらもたくさんの人を味方につけ、未来を切り開いていく姿は、家庭と仕事の両立で悩むママはもちろん、夢を持つすべての人たちを勇気づけるはず! ぜひご一読ください。

 

子どもが1歳の頃、新造船の就航イベントで。隣は外航船員を目指す若者を応援する“J-crew プロジェクト”のペギ機関長。

with class読者のみなさん、初めまして。野口枝里(のぐちえり)と申します。私は川崎汽船という海運会社で働く航海士で、日本と諸外国の間を運航する外航船の船長資格を持っています。実は私、日本の大手3社と言われる海運会社では初の外航船の女性船長なのですが、わが社はPRが控えめ、かつ変に気負わないようにという配慮もあり、特に話題にはなっていません(笑)。現在は陸上勤務中で、当社が運航する船のサポートや営業支援を担当。実際に船長として海に出る日を心待ちにしているという状況です。

*外航船とは:国際航海に従事する船で、日本の輸出入の99.6%を担っています。そのうち日本人の船員は2200人くらい。

海運業界は長年、男性が中心でしたし、今でも女性は圧倒的に少ないのが実情です。当社の場合で船乗り約200人中、女性は10人足らず。とくに私が乗る外航船は一度航海に出ると半年ほど家に帰れません。世間的に見れば女性にとって厳しくも感じられる職場環境で、育児や家事をどう乗り切っているのか、お話させていただければと思います。

同業の夫と結婚。どちらかが海に出ているというすれ違い生活が“フツー”です

――“外航船に乗る”というのはどういった働き方なのでしょうか。

私が乗る外航船は、日本と諸外国の港を航行するため、仕事内容にもよりますが、乗船期間は約6ヵ月におよびます。そして下船後は3ヵ月ほどお休みなる、というのが基本的な勤務形態です。乗船している間はほぼ毎日仕事があり、1ヵ月に一度くらい休みがあるという感じですね。休みといっても船の中にいて下りられるわけではありません。船の行先は、運ぶものにもよりますが、世界中どこへでも行きます。当社の場合は、20代ではわりと乗船の仕事が続いて、30代以降になると陸地での勤務が3年くらい入ってきます。現在、私は陸での勤務をしている時期なので、オフィスで船乗り(海技者といいます)として自動車の運搬船に関わるさまざまな仕事を担当しています。

――一年の半分を海の上で過ごすというのはかなり珍しい勤務スタイルだと思います。そういった生活に理解のある方とご結婚されたのですか?

そうですね、夫は同業ではあるのですが、他社なんです。大学時代の先輩が開いた船乗りの飲み会で出会いました。2014年に婚姻届けを出したときは、ちょうど二人とも乗船していたタイミングで、乗船前に入籍準備を済ませておいて、義理の両親に婚姻届を提出してもらいました。「二人とも陸にいるときに一緒に出せばよかったのに」と言われることもありますが、恥ずかしながら、7月20日の海の日に出したくて(笑)。

入籍当日は別々の洋上にいました。記念に船上でパチリ。

――航海士同士、同業者との結婚はメリットが大きいのでしょうか?

一般の方からすると、何ヵ月も海上にいる生活というのは想像しがたいと思います。そのため、他業種のパートナーだと理解を得られないことも少なくないようです。その点、うちの場合は仕事内容について細かい説明が不要で、なにかと誤解が生じないというのは非常にラクですね。現在、夫は私とまったく同じステイタスなんです。“船長の資格を取得しながら、実際の船長としての乗船キャリアはゼロ”という状態。また、乗船時は同じ一等航海士なので、中間管理職的な悩みを分かち合えるのはメリットかもしれないですね。

デメリットといえば、夫婦の会話が油断すると船の話ばかりで、かつマニアックになりすぎることくらいでしょうか(笑)。「(船の)油や海水をポンプでどう最後まで吸い上げるか」というような話題が日常的に交わされていますし、家族旅行で船に乗った時は、「この船は出航前なのにエンジン音がすごく小さいとか、プロペラは……」などという話を夫が振ってきたり。私がその意味を理解できてしまうので、うっかりいつでもどこでも船トークになってしまうので、お互い気持ち悪いなと(苦笑)。「休みの日くらい船のことを忘れられればいいのに」と思うこともありますが、船のことは嫌いではないのでそのあたりは適度に、ですね。

実は、同業ではなく“陸地で働いている人”と結婚したいなと思っていたんです。決まった場所と時間で、ある程度余裕を持って仕事をしている人に家庭を守ってもらえれば、私は安心して海に出られるな、と。酒屋さんなど家で商売をしている方だとか……。夫に求めるものは稼ぎよりもそうした安定感だったのですが、気づいたら二人とも何ヵ月も海に出ていて、全く会わない日が続く、という思い描いていた生活スタイルとはかけ離れた家庭を築いていました(笑)。

妊娠がわかった瞬間は頭が真っ白に……会社への報告は、つい「申し訳ありません」と口走って次のページ
 
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