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乙武洋匡「『五体不満足』を出してしまったことに責任を感じている」そこから生まれた“使命感”とは?

マイノリティの革命児が語るプロ論

ベストセラー『五体不満足』でセンセーショナルに登場し、その後様々なメディアを通して世間の当たり前を裏切ってきた乙武さん。投げかけられた質問に対して、まっすぐ的確に、時にユーモアを交えて答える言葉に垣間見えるのは経験に裏付けられた自信。まさに、彼が自分の軸だと言っている「自己肯定感」だ。人間関係や世間の目など、息苦しさを感じている人にこそ読んでほしいプロ論。
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[乙武洋匡]シャツ¥30800 /スドーク、腰に巻いたシャツ¥30800 /スドーク、トップス ¥18700 /ラインヴァンド、車椅子にかけたコート¥63800 /ニュージアン(エムエイティティ) スパッツ¥14300 /ミスタージェントルマン(ミスタージェントルマン) 肩に巻いたジャケット、ロープ/スタイリスト私物
――乙武さんが自分の当たり前に真っ直ぐ生きていこうとする一方で、世の中はますますそうすることが難しくなっているように思います。
僕もそれを感じて、ヨーロッパへの移住を考えたことがありました。海外を放浪してヨーロッパに5ヵ月ほど滞在したのですが、特に西ヨーロッパの雰囲気が僕はすごく好きでしたね。日本ではよく「みんなちがって、みんないい」という金子みすゞさんの詩が使われます。僕も好きなフレーズですが、ヨーロッパの空気感は「みんなちがって、みんなどうでもいい」という感じ。人と違うけど、別にその違いもどうでもいい。その代わり、いざ困っている人がいたらみんなで助ける。その空気感がすごく楽でした。それでいうと、日本は真逆になってしまっているのかな。些細な違いにはすごく敏感で、「お前らここが違うじゃないか。もっとこっちに合わせろ」と違いに対して不寛容。困っている人がいても自己責任だとバサッと切る文化がありますよね。もっと寛容であった方が、みんなが生きやすいはずです。

――でも結局、日本に戻ってきて今は義足のプロジェクトにも取り組まれています。世間の当たり前にも立ち向かおうとしているように見えますが、そのモチベーションはどこからやってくるのでしょうか。
やっぱりあの時期に『五体不満足』という本を出してしまったことに、僕は責任を感じているんです。僕自身はこういう性格なので、人がどう思おうと常識がなんだろうと、自分の人生を楽しく生きていくことが可能な人間。でもそれはある程度メンタルが強かったり、自己肯定感がとびきり高くないと難しいだろうなとも思います。世間の当たり前を壊したからには、ある程度の余力のあるマイノリティである僕が、他のマイノリティの人も生きやすい社会にするために動くべきだという勝手な使命感を持っているんです。

――メディアで発言する際に「自分の言葉を障害者の代表として受け取らないでほしい」と強調されていると思うのですが、それで逃げ切らず、あえて使命感を持って問題に取り組んでいるのはどうしてなのでしょうか。
一つ大きかったのは、2016年のスキャンダルです。政界への進出も、それまでやっていた仕事も見事に全てなくなりました。これから先どうしようかと考えていたときに、起業してビジネスをやっていくことも考えて起業家の友人と話していると、「それは乙武洋匡の無駄遣いじゃない?」って言われたんです。「ビジネスは他の人でもできるけれど、乙武には乙武にしかできないことがある」と。その言葉の影響は大きかったですね。

――YouTubeでも「障害者と性」など興味深いテーマを配信されていますが、どういう意図があるのでしょう。
これまでメディアの中でも「障害者と性」はタブー視されてきました。でもある程度注目されてきた僕が発信することで、大勢の人が視聴してくれてそのうちの何割かが、「あ、これは本当に社会的な課題だね」と認識してくれて、それを語ることがタブーじゃなくなると良いなと思っています。例えば“炎上する”というのも、話題になるということ。炎上しても儲かっていないので炎上商法というのとはまた違うんですけど(笑)、炎上話法とは言えるかもしれません。マイノリティの問題って、マジョリティにとっては興味の湧かない話題だし、スルーできてしまう。それを議題にあげるきっかけになる“引っかかり”を作っていくというのは僕の中でも大事な仕事です。ただその役割に乙武しかいないという状態もアンバランスで、メディアで発信力のあるマイノリティが何人も出てきて「乙武が言っていることは古い」と言われて、僕が気持ちよく引退していくっていうのが本当は望ましいと思うんですけど、今日もこうしてのこのこと出てきました(笑)。

Biography & Profile

◆1976年
東京都新宿区で誕生

東京都新宿区に生まれる。先天性四肢欠損(生まれつき両腕と両脚がない)という障害を持って誕生。両親は近所の方に挨拶して回り、「今度うちにこういう子が生まれましたので、よろしくお願いします」と応援団を増やしていったという。

◆1998年
『五体不満足』がベストセラーに

早稲田大学在学中に、それまでの人生を振り返り今の率直な思いを語った『五体不満足』を執筆・出版。「障害は不便です。だけど、不幸ではありません」というメッセージは多くの人の心に刺さり、ベストセラーとなった。(1998年、講談社)
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◆2002年
スポーツライターに

大学卒業後は、「スポーツのすばらしさを伝える仕事がしたい」との想いでスポーツライターに。雑誌『Number』の連載をはじめ、スポーツ関連の執筆活動に精力的に取り組んだ。『W杯戦士×乙武洋匡 フィールド・インタビュー』(2002年、文藝春秋)

◆2007年
小学校教論に

教員免許を取得し、東京都新宿区教育委員会非常勤職員、杉並区立杉並第四小学校教諭を歴任、教育への造詣を深めた。この教員時代の経験をもとに書いた初の小説『だいじょうぶ3組』は映画化もされている。『だいじょうぶ3組』(2010年、講談社)
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◆2017年3月
世界放浪の旅へ

2016年に週刊誌で不倫スキャンダルが報道され、参議院議員選挙への出馬を辞退。その後、離婚が成立したのちに、世界37ヵ国を車いすでめぐる放浪の旅に出る。帰国後、世界中で様々な人と出会った経験を著書にまとめた。『ただいま、日本』(2019年、扶桑社)
◆2017年10月
乙武義足プロジェクト始動
2017年にスタートし、現在も進行中の「乙武義足プロジェクト」。日本人初となる四肢欠損者の二足歩行に、各界のプロフェッショナルを集めて挑戦している。その様子は著書にもまとめられた。『四肢奮迅』(2019年、講談社)
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撮影/柏田テツヲ スタイリスト/SHUN WATANABE ヘア&メイク/石塚真依 取材・文/平井莉生 デザイン/attik

●再構成with online編集部  ●商品情報はwith2021年9月号発売時点のものです。
 
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